質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第四十九号)昭和二十二年九月六日配付

内閣参甲第五六号
  昭和二十二年九月五日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員駒井藤平君提出一般農政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員駒井藤平君提出一般農政に関する質問に対する答弁書

1. 奈良平野の旱害根本対策としての吉野川及天川の分水工事の必要は政府におきましても既に之を認め現に其の調査実施中でありまして其の一部は既に完了致して居りますので県とも充分連絡致しまして迅速に其の実現を期したいと考えて居ります。

2. 現在の供出米の割当は収穫見込高から農家自家保有量を差引いた数量を農家の供出責任数量としているから旱害の結果収穫の減少のあつた場合は当然割当を軽減されることになるので、特に旱害地に対する供出米の割当を決定する必要は無いと思われる。又旱害地の農業経営の負担を米価の点からカバーするために旱害地の米の買入価格を別途に決定することは困難である。
 旱害地帯における農民並びに県当局の努力に対しては感謝に堪えない。経費の国家補償に関しては、農業保検制度において三割以上減収地については保険金(収穫皆無地には反当一千円程度)が交付される。
 旱害地の灌漑応急施設事業に対しては何分の措置を採るよう目下準備中である。

3. 養蚕業の振興については昨年八月十三日閣議決定となつた蚕糸業復興五ケ年計画により、養蚕農家の増産意慾を昂上せしめるよう努めて来たが、昨年の夏秋蚕繭の価格は養蚕意慾を殺ぐこととなり、又本年の春蚕繭の予想価格は更に繭の増産に悪影響を来すと考えたので、政府はこれが対策として本年春蚕繭増産供出緊急措置を樹立し、その措置としては日本蚕糸業会より自給肥料の増産、有畜経営の導入、養蚕共同作業の促進、上簇改良の普及、団体活動の促進等の諸施設のための助成金を支出せしめると共に、桑園用窒素質肥料一貫匁の特配、自家用繭の許容限度の拡張、絹製品の還元配給、報奨物資の特配を行い、養蚕意慾の昂上を図つた。然るに桑園拡張計画は本年四月一日現在に於て新植面積は四、六三六町であつたが、其の反面掘取面積が四、四一四町で差引増反面積は二二二町であり、産繭額は全国的に凍霜害を蒙つた結果春蚕の上繭供出量六、二一二、〇五六貫となつた。
 其の後本年の春蚕繭の価格は新物価体系により繭価が他の農産物と均衡を得るよう大巾に引上げられ、昨年夏秋蚕繭の九〇〇掛に対し一挙に二、六〇〇掛に引上げることとなつたので、この繭価の改訂に伴い養蚕意慾は昂揚し、夏秋蚕繭割当量の確保は可能と予想されるが、生糸の米国に於ける売行の状況及国内滞貨の状況等の消費面悪条件が養蚕農家に心理的な影響を与える傾向にあつた。然し貿易再開を契機として絹製品の需要が殺到しているのみならず生糸の注文も漸次増加している状態にあつて、国内の蚕糸事情も次第に明朗化しつつある。
 尚、夏秋蚕期に於ける養蚕意慾の昂上を図るために桑園用の肥料については反割当量の外上繭供出量二貫匁について窒素質肥料硫安換算一貫匁を配給する供出リンク制の措置をなし、その外稚蚕児配給施設、繭質改善施設、酒、煙草の特配をなした。