質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第四十六号)昭和二十二年九月三日配付

内閣参甲第五二号
  昭和二十二年九月二日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員青山正一君提出生鮮食料品(水産物)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出生鮮食料品(水産物)に関する質問に対する答弁書

一、統制の問題について

(1) 魚介類の価格統制を多獲性の大衆魚に限定し、高級魚等については配給統制のみとする方法については、従来も度々論議された所であるが、これについては次のような難点が考えられる。
(イ) 高級魚の観念が明確でないこと。特に漁撈技術的に見ればその区別が極めて困難であること。
(ロ) 現在の食糧事情では高級魚と雖も出来る限り家庭配給に廻すべきであるが、その価格統制を撒廃すれば事実上高級魚は富裕階級の独占する所となり、食糧の公平分配が出来なくなること。
(ハ) 現在の消費者の魚介類に対する知識程度では、高級魚と大衆魚を一応分けてみてもその識別が困難であるから、末端配給に於て無差別に取扱われ、配給制度の混乱を招く虞があること。
(ニ) 高級魚のみ自由価格となれば高級魚の生産は増加するであろうが、その反面、漁網、綿糸等の資材が高級魚の生産面に流れる傾向を生ずること。
(ホ) 高級魚の価格が騰貴すれば、高級魚の生産に従事する労務者の収入増となり、これが一般漁業労賃を引上げ労務者の移動を生じ、この面からも大衆魚の生産が阻害されること。
(ヘ) 高級魚が自由価格となれば、漁業家、配給業者は高級魚の生産販売に心を惹かれて、大衆魚の生産及び販売に熱意を失うこと。
(ト) 高級魚の生産にも燃油は必要であるが、闇油が底をついてゐる現在高級魚に全然燃油をリンクしなければ高級魚の生産も困難となること。
(2) 統制を行うからには取締りも厳重に実施するのが当然であると考える。

二、荷受機関の複数制について、

 荷受機関の複数制と統制が理論的に矛盾するものとは思わないが、複数制が行き過ぎて多数の小荷受機関が濫立すれば統制の実施が困難となる傾向があることは認められる。
 今回の複数制の趣旨は、私的独占に伴う諸弊害を除去するのが主であり、郡小の荷受機関を濫立させることは本旨ではない。このため荷受機関の集荷の最低責任数量を定める制度となつて居るが、その最低責任数量の決定は各都市の実情により異るべきであるからこれを知事に委任した。その結果地方によつては濫立の傾向も認められるが、最低責任数量を厳格に決定適用してこの制度を適正に運営することを知事に対し希望して居る。然し乍ら単数制又は之に近いものを強行する考えはない。
 五大都市中央市場卸売会社の老舗料は、将来之を存続させる考えはないが、個々の会社について検討し清算の結果赤字となるものについては、何等かの方法で之を補填することも考えている。

三、魚価と資材について

 資材の対策については種々方法を講じて居り、鉄鋼、木材、セメント等の必需量は現下の生産状況からすれば到底満し得ないが、余裕のあるものについてはその必需量を満すべく努力中である。漁網綱はその殆んどが輸入に俟たねばならぬため、目下供給は需要量の半ば以下であるが、指定消費地への出荷者に対しては報償用として特に重点的な配分を行つている。石油類も漁業者の要求の六十%程度に過ぎない。これを最も有効且適正に配分するため現行のリンク制に更に検討を加えている。

四、末端配給登録制について

(1) 末端配給の登録制が机上プランに終るか否かはその実施の如何によるから、登録更新の度毎にその実施方法につき検討を加えている。要は消費者の自覚と業者の不純な運動の防止であるから、この点充分注意して登録制度の本旨にそうよう努力している。
(2) 登録更新は出来るだけ短期間に行うのが登録制度の本旨であるが、事務的に見て限度があるから三ケ月という期間を決めた。小売業者の立場からすれば安定性を欠くことになるが、消費者本意の立場からすれば三ケ月の期間は適当と考えられる。

五、水産製品の取扱について

(1) 製品の価格は既に改訂実施済である。
(2) 塩蔵のアジ、サバ等については、軽度の塩蔵等と認められるものは出来る限り鮮魚として統制する。鮮魚として統制出来ないものについてはその実情に応じて善処したい。

六、金融逼迫の問題について

(1) 農林省としては漁船の三十三万噸建造計画を樹立し、之に伴う漁船建造資金として復興金融金庫から融資を受けて徴用滅失漁船の建造を促進している。同金庫創設以来六月末迄に水産業に対する融資額は九五一、六六二、〇〇〇円でありその内個人に対する融資額が半ば以上を占めて、従つて小漁業者を優先的にして居る。又借入金の手続も次第に簡素化されつつあり、決して煩雑ではないと考える。
(2) 金融一般が逼迫して来たため、荷受機関の資金借入れも若干困難になつたこととは思うが、資金不円滑のために入荷が悪くなるようなことがないよう善処したい。