質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第三十号)昭和二十二年八月二十一日配付

内閣参甲第三〇号
  昭和二十二年八月十九日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出開拓政策途上に於ける隘路に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出開拓政策途上に於ける隘路に関する質問に対する答弁書

一、土地の問題

 さきに制定された自作農創設特別措置法に基き、政府は民有未墾地の買収、国有未墾地の移管を行つているが、七月二日までの実績は左の通りである。
                    町
   民有未墾地買収面積   五二、四〇〇
   国有未墾地移管面積   一七、一〇〇
     計         六九、五〇〇
 右の実績は必ずしも十分とは言えないが、決して悲観すべき状況でもない。
 買収計画の立案者たる農地委員会が、既耕地買収のみに追われることがなくなり、委員会及び地方庁の係官が買収事務に慣れるに従い、右買収実績は相当に増大することが予想され、又国有地開放については、林野局、国有財産局との間にその事務の簡捷化についての取極めが成立しているので、末端にまで周知せしめる手段をとつているから、急速に解放面積が拡大するであろう。
 なお現行法の不備に起因する開拓予定地の立木伐採に対する禁止、綜合開発等については、将来法的措置を講じて強力に開拓を進めてゆく所存である。

二、資金の問題

 開拓者資金融通法による営農資金は公債発行の関係上年四回に分ち、ある時期に入植した者に対しては当該四半期中に貸付をするようにしているが、本資金が長期低利且つ無担保で貸付られる関係もあり、その貸付は自作農として経営が安定し、償還の見込も十分ある者に限ることが必要であるので、その点について都道府県知事が十分責任をもち得る時期において貸付を行う方針である。
 資金融通の最高限度は、営農資金は一万円、住宅資金は一万五百円と規定されてはいるが、これは開拓者の償還能力以上に貸付をし、後になつて過重な負債を負わせることを避けることを主旨とするので、必ずしも一律に最高限度まで貸付することを意図するものではない。
 従つて政府はこの限度内において、地方開拓委員会及び都道府県知事の意見をきいて、地帯別、地区別その他種々の状況に応じ実状に即して貸付けることとなつているのである。然し現在の経済情勢からして現行の最高限度額は実情に即していないので、国家財政の許す限りその引上げ方につき関係方面と接衝中である。

三、開拓者用食糧、肥料の確保

 開拓者に対する食糧加配は開拓事業実施上特に重要であるので、本年一月からは入植者に対しては男月六升女月三升六合、一般開墾干拓労務者等に対しては男月五升女月三升の加配を実施しており、その実績は各都道府県より月々報告を受けているのであるが、現下の食糧需給状況よりして府県によつてはその実施状態は必ずしも良好と言えない実情である。開拓者に対する加配米割当の枠は一般配給とは別個のものである故、政府はかかる府県に対しては当該府県の加配運営委員会と緊密な連絡をとり、減配、遅配、欠配等により開拓事業推進に支障を来さぬよう督励し加配の末端までの滲透に努めている。
 肥料の配給については、総配給量の中、従来供出にリンクして配給される量が相当大きな比重を占めていたこと、並びに末端に至るほど肥料の配給を供出と関連させる傾向が強かつたこと等の理由に基き、開拓者は実際においては一般農家に比べて不利な立場にあつたことは事実である。しかし本年度秋肥からは供出報償用に比して一般配給用の肥料が相対的に増加する外、開拓者用の枠もある程度認め、且つ配給も切符制によることとしたので、今後の配給は著しく改善する筈である。

四、家畜預託制度の実施

 開拓地では畜産を主体とする以外に合理的な営農の方法はないというも過言ではないのであつて、昭和二十三年度予算においては特に開拓地の家畜に関する事項に重点をおき、特に牛馬の導入を強化したいと考えている。
 次に畜力開墾については、地勢上これによらねばならぬ場所も多いが、一方営農面との連繋上から言つてもわが国の開拓地の実情に即した方法と思われるので、本年度において機械開墾経費の一部を転用して開墾用牛馬並びに畜力開墾用農機具の購入に振向けるよう計画している。
 (新墾プラウについては、改良の余地があるので、他の畜力農機具と共にその生産工場を指定し、学者並びに経験者の指導によつて研究製作に当らせている。)

五、大規模開拓に必要な基本施設の国家負担

 現在は地区内道路、地区外幹線道路及び水利施設は全額国庫負担で実施しているが、電気、通信施設については予算を計上していない。基本施設の高率な国家負担の必要性は十分認め、財政と睨み合せて、できるだけ施設の充実に努めてゆきたいと考えている。