質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第二十号)昭和二十二年八月十二日配付

内閣参甲第二四号
  昭和二十二年八月八日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員谷口彌三郎君提出産児制限に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷口彌三郎君提出の産児制限に関する質問に対する答弁書

一、国民優生法は、悪質分子の出生を防止することが目的であるためこの法律をもつて人口問題を根本的に解決することは、不可能である。
 ただ社会状勢の現状に鑑み申請、手術等の手続を簡易化して本法の活用を図らなければならないことは同感である。なお同法第十六条による妊娠中絶の手続を簡単になし得るよう通知が発せられて居る。

二、優生手術を当然うける者が妊娠せしめ又はせしめられた場合、妊娠中絶を行い得るようにすることについては目下研究を進めて居る。

三、避妊用器具及び薬品中有害なものは有害避妊用器具取締規則及び薬事法によつて今後充分に取締を実施致したい。

四、妊娠中絶の適否を正しく判断するための審議機関は、その必要を感ずるが妊娠中絶を社会目的にまで発展せしめる目的をもつて審議機関を設置することは、その波及するところも極めて大きいので慎重に考えなければならぬと思う。

(イ)強姦その他不法なる妊娠の場合の、妊娠中絶は刑法との関係もあるのでなお研究したい。なおかかる場合刑罰を受けたような例はない。
(ロ)精神欠陥者が妊娠した場合は、妊娠中絶を行い得るよう途を開くことについては研究を致して居る。
(ハ)社会目的の妊娠中絶を認めることは刑法との関係もあり、社会風教上の影響もあり且つ各種社会施設との睨み合せも考えなければならないので、余程慎重に検討を要すると思う。
(ニ)分娩毎に甚だしく母体の健康度を低下する者については、それが妊娠中絶の医学的条件を充たす場合は人工妊娠中絶を行うこととし又生活困窮により育児不可能な場合はこれを生活保護法の適用等社会的救済方法を考慮すればよいと考える。
(ホ)人工栄養が充分に行えるように努力しその実現を期すると同時に母体の休養、栄養等を正しく指導することにより乳汁分泌不充分の問題を解決致したいと思う。