質問主意書

第1回国会(特別会)

答弁書


(答弁書第九号)昭和二十二年七月十九日配付

内閣参甲第一二号
  昭和二十二年七月十八日

内閣総理大臣 片山 哲      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員油井賢太郎君提出経済実相報告中疑義に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員油井賢太郎君提出経済実相報告中疑義に関する質問に対する答弁書

一、総説第十三の商業所得については、平常経済の年の実績に比して国民所得中に占むる商業所得の比率が圧倒的に大きいことを問題にしているのであつて、換言すれば乏しい生産に基く物財取引量に比して商業所得が大きいことは、生産や勤労部面に従事する者に比して流通部面にたずさわるものが闇利潤をも含めて不当に大きい利得を得ていることを意味するのである。従つて政府としては流通秩序の確立によつて闇行為を滅し商業所得を勤労所得に比して平常の比率に復帰せしめんと意図しているのである。
 又勤労所得の割合が「三六九%」に増大しているのは「二八、八%」の誤りであつて此の点については訂正判で明かにしたが、この誤記によつて一層質問の如き誤解を招いたものと思う。なお物価水準の上昇の問題は結論的にいえば国民所得実体を水ぶくれ的に増加させるものであつて、物価水準が上昇したから商業所得だけ特に増大するのが当然だという議論はなり立たない。

二、健全な商業が経済活動に極めて主要なことは勿論であるが生産がおとろえては商業も結局成立たないから国民が生産的な勤労をきらつて商業にのみ向うようでは困るわけである。
 貿易における商業的経済と知識の主要なことは勿論である。

三、消費財、生産財の関係については全般的にみて消費財生産の恢復が生産財生産の恢復を上廻り、ストツク資財消耗の傾向がある。(この点は鉄鋼と機械工業の関係を例として簡単にふれた。)
 両者の比率は国民生活の要請確保と経済の根本的建直しの要請をとり折り合わせるかによつてきまるべきものであり現在その妥当な比率を一義的にすることは困難である。

四、植林事業の矛盾については直接「実相報告書」と関連はないが今後考慮を要する問題であらう。