質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第百二十八号)昭和二十二年十一月二十四日配付

食糧価格のパリテイ計算方式に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十一月二十一日

三好 始      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   食糧価格のパリテイ計算方式に関する質問主意書

 質問第百十七号「食糧価格のパリテイ計算方式に関する質問主意書」は、二十二年産米の価格決定に際してとられたパリテイ計算そのものを問題にしての質問ではない。かかる計算方式が将来長期に亘つて継続される場合、農産物価格と工業生産物価格の人為的並行化が、合理的なりや否やの理論的問題なのである。然るに内閣参甲第一三〇号の答弁において、政府は自らとつた政策を弁明せんとするに急にして、質問の意図を正しく判断せられて適切な御答弁をされているとは考えられないので重ねて質問したい。

一、農産物価格と農業経営用品及び家計用品価格の並行関係は、農家経済を脅威せずとする政府の立場は、農業生産形態及び農家生活形態を固定化しての議論ではなかろうか。生産形態及び生活形態が高度化し、経営用品及び家計用品の品目、数量等が増加した場合(これは当然且必然の進歩である)、それに比例して農業生産が高まらない限り、農家経済は不利になりはしないだろうか。前回の質問の要旨はここにあつたわけだが、政府はこれに対して答弁していない。

二、私が「米価率は大体漸増傾向にある」と言つたのは、長期の観察から大体のことを述べたのである。昭和六年乃至八年の如き特殊な農業恐慌時代に米価率が変則的様相を示すのは怪しむに足りない。又、公定価格制になつて以来の人為的価格を基礎に算出した米価率が経済秩序の自然的状態から生れた本来の意味の米価率と同一視し得ないのは勿論である。かかる特殊の状態を別にして、「米価率は漸増傾向にあるとは言えない」という根拠を御教示願いたい。

三、政府は答弁において「今日工業生産物の生産力は、戦争の結果激減しているのに対し、農産物の減産はさほど著しいものではないのであつて、(御質問のような考え方では相対的に農業生産力が高まることによつて米価率は低下すべきことになる)……。」と述べているが、私は、正に米価率は低下していると考える。(これは自由価格時代米価率は大体漸増傾向にあつたという観察と矛盾しない)その限りに於て農家経済は不利な立場にあることを確認する。此の場合正当に取上げねばならない米価率は、公定価格による無意味な形式的米価率ではなく、現実に流通している物の価格に基いて、いわば実質的意味の米価率でなければならないのは多言を要しないと思う。政府の答弁は米価率の低下を否定しているようにも聞えるが、若し然りとすれば、実質的意味の米価率が低下していない数学的根拠を教えていただきたい。

四、「工業生産力に比し農業生産力の低下が著しくないから、パリテイ計算により得られる米その他農産物の価格は農家にとり不利であるとは言えない。」という政府の論理は、現実的には空虚な形式論である。それは、必要なる物の流通が公定価格でなされていることを前提とする。それが如何に不可能な前提であるかは、既に国民の常識である。問題は、農業経営用品及び家計用品の何%が公定価格で入手され、農産物の何%が公定価格で手放されているかである。而して更にはそれ以外の形で需給する物の価格関係である。今日の農家経済は、一般的にはかかる均衝関係は不利になりつつあると言えないであろうか。かかる現実に対しての正当な判断とそれに基く適切な対策を有せずして今日の物価問題、経済問題は論ぜられないと思う。食糧供出が常に難行を続け、供出秩序が確立しないのも、過去の政策からすれば決して不思議ではない。価格は価格、生産は生産、割当は割当、警察法的取締は取締という如き政策の緊密なる統一性欠如の必然の結果である。此際こそ経済政策の綜合性発揮に努力すべきである。経済安定本部の本来の使命もここにあつたのではなかろうか。政府の見解を求める次第である。