質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第百二十七号)昭和二十二年十一月二十二日配付

小作料金指定価格不公平に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十一月二十日

木檜 三四郎      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   小作料金指定価格不公平に関する質問主意書

十二月二日小作料金指定価格不公平に関する私の再質問に対する、十一月十一日政府の答弁は顧みて他を云うの類にして毫も答弁にならぬ、かゝる答弁は旧来の官僚式で其場さへ済せば可なりとする護魔かし手段に過ぎぬ因て更に改めて質問する政府は真面目に質問の点に答弁する様要求する。

第一 政治は実際問題である事を実例を挙げて質問した即ち物価も通貨も平準を得て居れば小作料米四斗の価格が三十円で承知出来るが今日の如く某食堂で昼食を買うに米を供出して五十円出さねばならぬ、又林檎一ケ四十円、鶏卵一ヶ二十円と云う値段である、政府は物価暴騰の現状を理解して昨年和田農林大臣の時に一石五百五十円と定めた米価を本年一石千七百円之れに俵代五十円奨励金五十円を加えて千八百円とした、之れは経済界の実情に鑑みて決定したものである。然らば小作料金の如き昭和二十一年定めたる米四斗の料金が三十円と釘付けられて而かも今日の実状に於ては此料金を以てしては米五合も購入出来ぬ、之れが政府の所謂金納小作料の特徴であると主張し、以て地主を苦めて平然として居るのが政府の責任として可なりと信ずるのかこの点について明答を求む。

第二 憲法第十四条すべて国民は法の下に平等であつて人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」とある、即ち小作人も地主も法の下に平等でなければならぬ。而して農地調整法施行令第十二条の規定により農林大臣の指定する価格は
     円
一、玄米一石当り七五、〇〇
二、大麦二四、三〇
三、裸麦三六、三七
四、小麦四四、四三
五、大豆四三、八八

右の如き穀物値段は今日においては極端に安価であつて驚くの外ないのである。これが為め小作人は思いもかけね利益を受け、地主は意外なる不利益を受けるのみならず、経済的に生活権を脅かさるるのである。斯くの如く法の下に小作人と地主の取扱いが不平等であり又経済的に差別があつてこれは明かに憲法違反ではないか。

第三 憲法第二十九条「財産権はこれを侵してはならない」と規定してある。農林大臣一片の指令に因つて地主は不動産より生ずる利益即ち米、大麦、裸麦、小麦、大豆の小作料金は余りに安価の為め某食堂の一回の昼食料にも足らぬ実状である斯くの如きは多数地主の所有する財産より生ずる正しき利益を農林大臣の一指令に因つて蹂躙する事で明かに財産権の侵害である、これは憲法違反ではないか。

第四 憲法第二十五条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とある。地主は土地を有しその土地より生ずる利益により生活を営み得たに拘わらず農林大臣の一指令の為めに玄米四斗の小作料金価格三十円では一回の昼食さえ出来ざる状態で政治が実状に添わざる為め多数の地主を死地に陥れるものにて憲法上の生活権を奪うものにしてこれは憲法違反ではないか。

第五 政府の答弁によれば「金納小作料はもう米価や他の生産物価格の変動によつて左右されないものであり、これが金納小作料の特徴である」と云うが之れは物価及通貨が平準を得ておる時代こそ受け入れることが出来るが今日の如きインフレの激しき時に際し金納小作料の特徴として小作料金を釘附けて推し透す事は大なる間違いであると思うが政府の処見如何。

第六 政治は国民全体をして共の処を得せしめなければならぬ。一人其の所を得ざるも之れ政府の責任である。今や一農林大臣の指令に依つて多数の大小地主に不利益を与え之れに反して小作人に不当な利益を与う。斯くの如く同一日本人に対し甲に厚く乙に薄き為め多数の地主は政府の此処置に大なる不満と不平を持して居る。かかる行為は新憲法の規定に背き且つ民主々義の本義に違反するものと信ず。政府の処見如何。

第七 従来田畑より生ずる穀物を以て小作料として慣行し来れるものを禁止して金納に改めたる理由如何。

  以上質問に対し文書を以て答弁を要求する。