質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第百二十三号)昭和二十二年十一月十九日配付

満洲開拓移住民に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十一月十五日

池田 恒雄      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   満洲開拓移住民に関する質問主意書(一〇、一四、内閣参甲九七号参照)

第一

(1) 農事振興会は閉鎖機関に指定されているというが、満洲移住協会も同様閉鎖機関として措置すべきものではないか。
(2) 国民高等学校は内原訓練所とは別個のものであるというが、法律的見解としては形式的に別個であつても、運動としては同一のものであり、その主催者は加藤完治であつて、それが内原思想のオアシスであつたことは世間ひとしく認めているところである。しかるに、この国民高等学校が、今日でも旧態のまま農村青年子女の教育を続けているがこれはどうした訳か。
(3) 内原訓練所と隣接し姉妹的活動をしておつた日満鉱工青少年技術員養成所とはどのようなものか。

第二

(1) 満洲移住協会は終戦当時解散したというが、その当時の人事並びに財産目録を詳細に報告されたい。
(2) 満洲移住協会は財団法人であつたとしても、事実国庫補助により国家事業たる満蒙侵略のための特務機関であつたことは明かである。従つてその人事並びに財産は官公の財産人事に準じて処分さるべきものと思うがどうか。
(3) 右協会の財産の譲渡先は一、開拓民援護会 二、全国農業会 三、地元町村 四、開拓民帰農者の四つに分類出来る。それでこの四つの分類に従つてその譲渡したる財産の目録と価格を詳らかにし、且つその価格評価の合法的準拠を詳らかにされたい。
 尚、右の特定の譲渡先はいかなる合法的準拠があつて選定されたか。
(4) 一部の土地は帰農する者に提供したとあるが、この帰農者は引揚たる開拓民か否か。
(5) 現在、内原訓練所関係の土地は開拓民援護会、全国農業会の二者が所有する部分を除きその所有権のいかんを別として、旧訓練所職員によつて占有使用され、農具、役畜、住宅等も同様占有占拠されているがこれは何等か合法的基準によつて政府が措置したものか、それともいわゆる内原残党の掠奪行為か。
 これに関係する事実を詳細調査の上報告されたい。
(6) 建物の一部は附近の村に分譲したとあるが、附近の村役場その他の団体又は個人について私の聴取したかぎりでは答弁のごとき事実なし、そして極めて最近において地元と闇値によつて取引されつつある事実あり、政府答弁との相異甚だしいが、どうした訳か。

第三

(1) 一部の建物を引揚者の収容施設として利用しているというが、現在まで内原施設に収容したる引揚者の状況を詳にされたい。
 尚、これらの収容者に対する職業その他更生のためにどのような補導を与えたかを詳細に説明されたい。
(2) 開拓民の送出は政府の仕事であつた。従つてその引揚に対する援護は当然政府の責任であつて、政府自らなすべきものと思うが現在政府は直接どのような援護をしているか。
(3) 開拓民引揚も一般と同様で特別の取扱いをしないということは至極当然であるが、その更生のための援護の道は異るべきものと思う。
 私の見聞のかぎりでは開拓民引揚者は内地の緊急開拓地において極めて良好なる成績を示している。従つてこの開拓民を緊急開拓に向わしめる政府の措置を喜ぶのであるが、このさいその帰農状況を詳らかに示されたい。
(4) 開拓民援護会は開拓民に対する特別の取扱いをする施設ということにはならないか。
(5) 開拓民の援護更生と内地開拓農業の積極的推進のため特に開拓民の帰農と開拓事業とを合理的に結合せしめてゆくような施策を必要とすると思うが、政府にその発案がないか。

第四

(1) 開拓民援護会の経営の状況を知らされたい。
(2) 右援護会の現在の人事並に財産の動態を知らされたい。
(3) 右援護会の事業報告を詳しく説明されたい。

第五

(1) 終戦に際して満洲移住協会は解散し職員は離散したというが事実に反している。
(2) 右協会は一応法律的見解としては解散手続はとられたようであるが、直ちに援護会に改組発展せしめ、送出訓練と引揚援護即ち往を復に転換したにすぎない。しかも職員は離散せず、そのまま後継機関に勤務している。
(3) 内原訓練所中幹部訓練所と病院は全国農業会に移管されたにすぎない。事業は旧態のまま旧来の役職員によつて独立的に存立し旧来の事業を継続している。それは経営を農林省助成から全国農業会助成に切り替えその存続を合法化したにすぎない。
(4) この奇態なる解散と相続機関の設置については農林省、戦時農業団、満洲移住協会その他関東軍あたりの主脳的地位のものが共謀して終戦のドサクサ期に闇取引を行つたというようなことを、地元その他において耳にすることがある。これは単なる流言なりとして否定し去りがたい事証がないでもない。
 この際、右の団体や農林省等の間に介在してこの問題に関係した主脳的人物の介在の仕方を明らかにし、その真偽のほどを明白にされたい。
(5) 内原訓練所について答弁に必要なる資料を喪失したというが、喪失の事情を説明されたい。