質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第百十一号)昭和二十二年十一月六日配付

天皇陛下巡幸に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十一月四日

山下 義信      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   天皇陛下巡幸に関する質問主意書

 陛下には引続いて全国を巡幸遊ばされ、戦災者を中心に、親しく慰問激励のお言葉をたまわり、経済再建の思召から生産現場などにも臨ませられ、国民も心から感激して御歓迎に熱狂する有様は、誠に感銘に堪えないところであるが、この際次の諸点を質問して政府の善処を要望するものである。

一 天皇陛下巡幸に関する宮内府の処置については挙げて政府の責任と思うが如何。

二 地元地方公共団体長或は宮内府行幸事務関係者などのはからいにて、行幸巡路、お立寄地点などを決定する模様であるが、種々物議を醸し、非難を招き、請託、懇請激烈をきわめ、甚しきに至つては下検分に際して歓待を要するとの風評もある。政府はこれらの弊害なきよう訓告を出していると信ずるも、断乎しゆく正を励行せねばならぬ。巡幸プログラム等の決定については、政府は十分監督しているや否や。又これが所管は何大臣とするものか。

三 近く十一月下旬から中国地方巡幸の御予定と聞くが、その中には広島市も訪わせ給うと承る。同市はいうまでもなく原爆の廃墟都市にして、この地に天皇ののぞませられるは内外の感無量とするところである。
 さればその巡幸予定のごとき真に御仁慈に相応わしきよう慎重に吟味されねばならないと思うが政府の所見は如何。

四 然るに聞くところによれば現在においては、同市は二時間余にて通過される程度に止まるとのことである。いわゆる素通りの程度に計画されてあるということは、実に心なきわざと遺憾に堪えざるものである。
 政府はかかる巡幸計画を至当と考えるか如何。

 世紀の歴史的都市を訪い給うことは、ただに一地方の問題ではないと思う。日本天皇と原爆その地の御行動とは世界の注視するところとなろう。希くは平和日本の象徴であらせたまう天皇として最も厳粛なる歴史的行幸であらせらるるよう政府の中枢部においても深甚なる考慮と関心とを払われんことを希求して止まない。

  本員は政府の賢明なる答弁を期待するものである。