質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第八十九号)昭和二十二年十月十一日配付

米価算定方針に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十月十日

池田 恒雄      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   米価算定方針に関する質問主意書

第一、

 最近の各新聞紙上に、米価算定について、経済安定本部は依然としてパリテイ方式を堅守するという趣が発表されている。しかるに一方平野農林大臣は農業委員会等において生産費を割らない米価というのが私の持論であるとその生産費主義を強調している。
 米価問題は農政上の中心問題であるというだけではなく、供出問題の裏面は又米価問題であり、それは直ちに国民全体の食糧問題に連らなる。供出問題、食糧問題が国政の上位に置かれているこの秋、政府の主要なる部分に米価問題についてこのやうな根本的方針の対立があることは、供出問題、食糧問題に関する国民の指向を惑わし、又一方政府の食糧施策を今後更に破綻と混乱に導くものと考えられるが、片山首相はこの主要なる閣員の基本方針の対立と施策の混乱をどのように収拾し且つ秩序づけてゆくかを明示せられたい。

第二、

 十月三日の農林委員会において、井上農林次官はパリテイ計算における倍数は工業生産物の六五倍に対して農業生産物は四八倍という開きは、農業にあつてはその生産に土地、天候等の自然力が関与する関係から、工業生産同様の計算は出来ないという趣旨を強調された。すると、六五マイナス四八即ち一七が土地、天候等の自然力を数字化したものであるという計算になつて来るのであるが、政府はこの土地、天候等農業生産に関係ある自然力をいかなる方法によつて一七という価値に評価したか、農業生産における自然力評価方法を明示されたい。
 更に政府調査の農産物生産費を詳らかにし、その生産費構成における自然力の計算を説明されたい。

第三、

 民間における系統的農業経済調査機関である全国農業会調査部における本年度米価計算を見ると昭和九、十、十一年平均の八七倍となつていて、政府の計算とは甚だしい開きを示している。
 即ち全国農業会が毎年実施している生産費調査、農業経営調査、農村物価調査その他の資料に基き、別紙のような要領にて本年度米価を推算した結果によると八七倍石当り二、四七八円六三銭となつている。
 全国農業会の調査成績は常に民間輿論の数字的基準となつて来ている。従つて今年度米価についても全国農業会の計算に現れたこの数字は、米価に対するこの秋の民論に指標を与えるものとして重視されるのである。この際政府における米価パリテイ計算の内容を明示し、全国農業会における計算との差異を技術的に詳らかにし、全国農業会の計算に対する見解を明示されたい。

第四、

 今年度米の小売値段値上げ当時の政府並に食糧営団の手持米はどれほどあつたか、その手持米の増価利得は何程か、更にその増価利得を政府はどのように処分するかを詳らかにされたい。