質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第八十八号)昭和二十二年十月十一日配付

税に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年十月九日

栗山 良夫      
川上 嘉      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   税に関する質問主意書

 政府においてはインフレーシヨンの防止及び経済の安定を目途として健全財政の確立に凡ゆる努力を傾注中ときく、然しながら健全財政の確立即ち税収入の確保については其の努力の如何は別として国民の大部分は等しく、税務機構の弱体に起因する徴税能力の不足、税制の不合理の為の課税対象及び税率の非適正に関して政府の施策を不充分となし、徹底的、抜本的な改革の即時断行を強く要求している、そこで我々は税に関する根本的な問題に対する政府の所信を質したく左記各項について質問する。
 尚本回答は広く国民大衆に公示する予定であるから、文書を以て応えられたい。

一、税務行政の拡充強化の件

 税務行政は中央、地方を通じて其の機構及び人的要素において非常に欠くる所があり、従つて担税能力を有する大口所得者への課税は常に課税技術上困難であるとの理由で不問に付されている。
 政府はこのような立場を堅持しつつ、一方では収入の増加を図るため大衆課税的な新税を相ついで計画しているが、現在の税務能力を以てしては、現行の税種においてすら充分なる調査が出来ず、従つて公平且つ徹底した課税を期し得ない有様であつて若し税務機構の整備拡充、税務官吏の待遇改善、徴税費の大巾引上げを断行することなくして徒に新税を設けるも、其の結果は益々税務行政の信用を失墜し、官民離間し、国民負担の不公平を激化するのみで遂には国家経済の崩壊を招来するやも知れない。
以上の見地より次の各点を質問する。
(一)政府の立場から指摘出来る税務機構の弱点及び之が強化の具体策如何
(二)現税務官吏の質及量を判定しうる統計的資料(官吏総数内熟練者数等)
(三)今後充足すべき予定数(年次別)
 特に政府は事務官約一万名の増員を断行すると言明したが今日まで殆んど充員されていないときく、実情如何
(四)現税務官吏及新充足官吏の徴税技術の教育訓練に対する具体策
(五)税務官吏の待遇改善に関する具体策
 特に徴収税額と徴税費との比率は諸外国に比して著しく低位にあるときく、出来うる限り広く数字的に比較明示せられたい

二、税の合理化の件

 政府が現在実施している課税は安易第一主義であり、従つて財政の増収計画は大衆課税と其の税率の引上げ等に集中せられている。この結果は赤字生活に悩む勤労者からの、或は真面目な企業からの過酷な税の取り立てを強行する一方、戦時或は戦後の新興大口所得者には所得額の不正申告に依る事実上の脱税行為を許容している。この事は強弁に近いが国民が等しく知り且つ不満を表明しているのが現実である。このような不合理な、不公平な税制は苛政なりと断ぜざるを得ないし又かゝる状況において健全財政の確立を叫ぶも木によつて魚を求むるに等しいと思考するが故に左記各点について詳細な回答を望む。
(一) 大口所得者への徹底的課税の意思を有するや、ありとすれば其の具体的構想如何
(二) 大衆課税(間接税を含む)の徹底的経減の意図を有するや、あるとすれば其の具体的方策如何
(三) 昭和二十一年度及二十二年度における闇利得を含めての国民所得の総額(不明のときは見込でよい)と其の業態別内訳
(四) 前記(三)の国民各層の国民総所得を基底として前記の(一)、(二)の方法即ち大口所得者へ徹底的課税と大衆課税の徹底的経減を断行する場合と現行財政計画との数字的比較

三、税に関する諸資料の件

 現行税に関する次の統計的資料を伺いたい。
(一) 二十一年及二十二年の各年度別、各税種別に国民所得額(闇所得を含めての)、税調定対象所得額、実収税額、差引滞納額及び其の理由内訳と徹収方策
(二) 税未徴収に伴う予算不足額は如何にして調達しているか

四、価格差益金の徴収

 公定価格の変更に伴う価格差益金は国庫収入とすることとなつているが其の収入状況を次のように分類回答せられたい。
(一)品種別価格差益金想定額を二十一年及二十二年度別及び実調定額並びに実国庫収入額
(二)価格差益金は現在税としての取扱ではないが其の性質は税と同様であると思う、厳正を期する為には当然税務行政の所管とし一貫運営を断行すべきであると思考するが如何