質問主意書

第1回国会(特別会)

質問主意書


(質問第四十六号)昭和二十二年八月二十六日配付

生鮮食料品(水産物)に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十二年八月二十五日

参議院議員 青山 正一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   生鮮食料品(水産物)に関する質問主意書

一、統制の問題について、

(1) 統制の存廃について全国各方面の生産者、配給業者、消費者層の忌憚のない意見を求めたが例外なく撤廃論である。「配給統制も価格面も表面だけの実行の伴わない規則なら空文に等しい、そんなものがあるが為に生産も行詰る、配給も思うようにならない」との理由である。
絶体量不足の今日直ちに統制撤廃が不可能とするなれば統制の対象を大衆魚であり多獲性の魚種例へばイワシ、サバ、アジ、イカ、サンマ、カツヲ、マグロ、グチ、ニシン、タラ、レンコ、ホツケ等其の他農林大臣の指定する魚種に限定し、高級魚其の他のものは配給統制のみとし、公定価格制を徹廃することが国民の希望に副うものと思う、而して資材其の他リンクの対照も以上の指定魚種のみとすることを妥当と思料するが当局の見解如何。
(2) 生鮮食料品として同一枠内にある青果も公定価格は厳存する、しかも店頭の価格標示は(公)の何層倍の高価で堂々販売が認められている。
此等農産物が殆んど自由価格で取引されるに反し水産物はまことに厳格そのものである。
重要度の比重においても彼此余り其の差を認め難いと考えるが価格面に対する取締の度合が余りにも相違する、斯る差異は如何なる理由によるか承りたい。

二、荷受機関の複数制について、

 荷受機関の複数制と統制そのものとは理論的に一致せない。
更に生産量の減退している今日荷受機関を増加することにおいて入荷のプラスを期待することは徒らに混乱と不正を助長する逆効果をさえ生む危険性が多分にある、限られた統制の枠内で、しかも三分の手数料の範囲内での競争の余地はあるとしても甚だ狭少である、丁度現在の行方はやせ馬に重荷(責任量)を負はして急坂を無理追している状態である。
 政府は単数に近い最少限度に圧縮して市場機構の健全化を図る意志なきや、
尚複数制の実施に伴い既存の五大都市中央市場卸売会社の老舗料解決の対策如何。

三、魚価と資材について、

 去る二十二日一応公定価格の改訂をみたが現在の資材入荷状況と睨合せるときこの改訂によつて生産の増強と出廻りの旺盛を期待することはできないと信ずる。
 価格操作も勿論重要ではあるが資材の裏付は更に重要である、漁業者の欲する資材が所要時期を逸することなく供給することを目途として考慮されなければならない。
 価格と資材が併行して始めて生産の確保も出廻りの旺盛も可能となるのである、これに対する政府の具体的な対策を承りたい。

四、末端配給の登録制について、

(1) 鮮魚及水産物の配給規則による末端配給の登録制は業者の信用と誠実に於て自己の業務の拡張発展が約束されるものであり机上プランは立派であるが事実は必ずしも計画の如く運営されていない、登録を集める為に相当の運動費を使用して居るものも可なりある如く見受けられる。
斯る運動によつて消費者の自由撰択権を奪うことは本制度の精神に反するものであり斯る不純なる運動は当然排除すべきだと考えるが如何。
(2) 期間三ケ月毎に登録の更新を為すことに規定されている、元より業者の努力を要請する精神に他ならないが小売業者としての営業権は当該更新毎に動揺し職務に対する安定性を欠く。
勿論自己の努力と消費者えのサービスの如何により岐れるところなるも「三ケ月」の期間について今少しく検討の余地なきや。

五、水産製品の取扱について、

(1) 最近鮮魚介類の価格の改訂に伴いこれを原料とする水産製品についても当然価格改訂が行わるべきだと予想しているが、これが遅延することに於て製産は停頓し値上げを見越して製品の出廻りは著しく阻害せられることは必然的である、これを防止する為には火急に製品価格を改訂するに在る、大体の改訂予定期を承知したい。
(2) 今回指定された水産物は大体九品目にして更らに「農林大臣の指定する種類」が別に定められているが現在の指定品目中には塩蔵さば、塩蔵あじ等は除かれている。
 将来斯る品種をも指定さるる予定であるか、若し指定がないものとすれば統制外品として相当大量に自由取引の部門へ逸脱する虞れがあるものと考えるが如何。

六、金融逼迫の問題について、

(1) 漁村は新円洪水の如く一部から見られているが事実は決して第三者が見る如く富裕ではない(公)の何十倍の資材を使用して安い(公)で出荷して余裕のある筈がない、一小部分の闇売漁業者が漁村の全部の如くみられることはまことに片腹いたい次第である。
 今漁村で一番行詰つているのは漁船の建造資金の枯渇である、豊漁を予期しながらも資金難の為め空しく見送つている現状である、復金からの融資も零細漁民は手続の煩雑と借入迄に相当の日時を要する為め折角開かれた恩恵にも均霑する機会が極めて少ない、借入方法を出来得る限り簡素化し、目的が達せられることを希望するが之に対する所見を承りたい。
(2) 荷受機関の複数制の実施に伴い金融業者の信用程度が非常に稀薄となり小額の借入にも苦痛を感じて居るのが現状である、しかも(1)に述べた如く漁村金融の逼迫に伴い荷受機関へ融資を迫る傾向は逐次濃厚となり荷受機関の金融を更らに梗塞する結果となる。
 荷受機関固有の資金の不円滑は直ちに入荷に影響を来すが、之れに関して如何なる用意があるか承りたい。