請願

 

第217回国会 請願の要旨

新件番号 1738 件名 医療崩壊を防ぐための医師増員などに関する請願
要旨  日本の医療は危機を迎えている。地域医療構想の下で医療機関の統廃合や縮小が進められ、新型コロナウイルス感染拡大の際は、必要な入院治療を受けられずに自宅や施設で亡くなるケースが日本中で発生した。医師は劣悪な労働環境に苦しんでいる。人口当たりの医師数が先進国最低という状況を医師の過重労働で補っているため、過労死にもつながる深刻な事態となっている。自分が健康であると答えた医師は四七%と半数以下で、二十代の医師の一四%は日常的に死や自殺を考えているとの結果が出ている(二〇二二年勤務医労働実態調査)。医療安全については、現場の医師の八割以上が医師の過重労働が医療過誤に関係していると答えている。二〇二四年四月から医師の働き方改革が本格的に始まったが、現行の低い診療報酬の下で多くの医療機関では医師の
労働条件改善のめどは立っていない。現状の働き方を欧米並みにして、これからますます増える女性医師も含めて、全ての医師がワーク・ライフ・バランスを保ちながらキャリア形成を保障され活躍できる診療体制をつくろうとすれば、現在の医師数では不可能である。大学や研究機関でも欧米と比較してスタッフは少なく、国からの予算不足で適切な賃金が払われないため、研究に携わる多くの医師が生活のためのアルバイトに時間を取られている。日本の研究論文数の国際順位は下がっており、この状況を放置すれば日本の医学研究水準の低下は必至である。この十数年間日本の人口千人当たりの医師数はG7で最低であり、常に高水準(日本の約一・五倍)を維持しているドイツやイタリア、そして、二〇〇〇年当時日本と同レベルだったがその後増員に転じたイギリスやカナダと比較して対照的と言える(二〇二二年日本医師会総合政策研究機構報告)。また、人口十万人当たりの医学部卒業生はOECD加盟国で最低であり、今後更に医師不足が進行することが懸念される。人口減少を理由に将来医師が余るとの意見もあるが、それは今後深刻な人口減少が進むと仮定した場合の必要医師数推計に基づくものであり、しかも現行の過労死水準の働き方を医師に強制し続けることを前提にした議論である。二〇二三年十月に開催された日本弁護士連合会の人権擁護大会で確認された、人権としての医療へのアクセスが保障される社会の実現を目指す決議の提案理由においても、医師不足を背景とした地域間・診療科間の偏在が極めて顕著となり、地域医療崩壊の危機的状況にあるとして医師不足の解消が必要であると訴えている。日本の絶対的医師不足は明らかであり、国民が安心して医療を受けることができるためにも、また、全ての医師が子育てや介護・趣味の時間が保障され健康で生き生きと働けるようになるためにも医師の増員は不可欠である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、医師の人間らしい働き方を実現しつつ地域医療を守るため、医師養成数がOECD平均並みとなるよう医学部定員増を行うこと。
二、医学研究及び医学教育が適切に行えるよう予算措置を行うこと。

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