請願

 

第217回国会 請願の要旨

新件番号 1311 件名 リニア中央新幹線・南アルプストンネル建設の中止を求めることに関する請願
要旨  JR東海は、南アルプストンネルの建設により大井川の流量が毎秒二トン減少すると試算しているが、トンネル湧水をポンプでくみ上げて大井川に戻せば中下流域に大きな問題はないとしている。しかし、ポンプアップを未来永劫(えいごう)確実に行うことは誰も保証できない。導水路トンネルを通じて水を戻す場所はトンネルから十一・四キロメートル下流であり、これより上流の流水量は確実に減少する。JR東海は、大井川源流部の沢の水が枯れるかもしれないとしているが、それを防ぐ有効な手だてを示していない。それどころか、水枯れで失われてしまう自然がどのようなものか、調査はこれから始めるところである。より本質的な問題は、JR東海の想定するトンネル湧水量が机上のモデルに基づく計算値にすぎず、トンネル掘削により帯水層が破壊されて大井川の水源までも枯らしてしまう可能性があるということである。JR東海は、トンネルを掘って出る土のほぼ全量(三百六十万立方メートル)を大井川河川敷の断層が確認されている場所に約七十メートルの高さに積み上げる計画を表明した。土砂を締め固め排水対策をして管理するため問題なく、また、要対策土についてはシートで覆って県条例で不可とされる河川敷に置くとしている。しかし、これらの盛土は環境を破壊し、大雨や地震で崩れたら災害を引き起こす。こうした問題についてJR東海と静岡県との対話は継続中であるが、調査が不十分で想定も不確かであることなど、環境アセスメントが適切に行われたとは言えない実態が明らかになっている。昨年来、岐阜県瑞浪市の水枯れや地盤沈下、大深度地下工事に起因する東京都の目黒川や町田市での低酸素濃度気泡の発生、沿線各地で露呈する残土置場の未確定や仮置場のずさんな管理などの問題が報道されてきた。そして、新たに愛知県春日井市で井戸や庭の池の水位低下が明らかになった。このような事象が起こったのは、一民間企業であるJR東海が工事費全額を負担し、国費支出を伴わないことから超巨大事業であるにもかかわらず国会での審議がなく、ずさんな環境影響評価手続によって主管大臣が工事実施計画を認可したことが最大の原因である。また、全国新幹線鉄道整備法の適用により、JR東海は地方公共団体による「建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置」(第十三条第四項)の便益を得ているが、営利企業単独事業に対する適用は立法趣旨から見ておかしなことである。また、事業主体が私企業で情報公開法の対象外であることから、工事データや事故の秘匿・契約内容の非公開などの問題も生じている。静岡の問題にとどまらず沿線全体を視野に入れ、リニアの環境影響評価とリニア建設工事の是非を国会において根本から審議し直すことを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、大井川流域八市二町の命の水を守るため、南アルプスリニアトンネル工事を中止すること。
二、南アルプスの自然と生態系を守るため、南アルプスリニアトンネル工事を中止すること。
三、リニアの環境影響評価とリニア建設工事の是非を国会において根本から審議し直し、南アルプスリニアトンネル工事を中止すること。

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