請願

 

第217回国会 請願の要旨

新件番号 534 件名 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
要旨  我が国では慢性腎臓病患者が千三百万人を超えると推計され、新たな国民病と言われている。現在では早期に発見して治療を開始すれば、腎臓の機能低下を防いだり遅らせたりすることができるようになったが、一たび腎不全になれば人工透析や腎移植が必要になる。また、慢性腎臓病は動脈硬化を促し、心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など命に関わる病気の発症リスクも高まる。国は腎疾患対策事業、糖尿病を含む生活習慣病対策事業などを推進しており、その成果や官民を挙げての啓発活動の効果などがあいまって、現在、約三十五万人が慢性腎不全の治療のために人工透析を受けているが、二〇二二年末に初めて透析患者数が前年と比較して減少した。しかし、依然として七十歳未満は減少傾向にあるものの七十歳以上では増加し続けている。早期発見や適切な治療により透析導入の時期は遅くなったが、その結果、透析患者全体の高齢化が顕著となり、通院支援、介護支援、フレイル・サルコペニアの予防・改善などが喫緊の課題となっている。近年は医師の高齢化により、透析施設の閉鎖を余儀なくされている地域が出始めている。生産年齢世代にある透析患者においては、社会で活躍している患者が多くいる一方で就業率は高くなく、就労意欲はあるが仕事に就けない透析患者がおり、透析患者に対する就労支援を充実させていく必要がある。腎移植に関しては、日本臓器移植ネットワークに登録している腎臓の移植希望登録者数は一万四千人以上だが、二〇二三年の脳死下・心停止後の移植件数は腎臓単独が二百一件、膵(すい)腎同時で三十五件と昨年より増えているものの、依然として脳死下・心停止後の腎移植の平均待機年数は約十五年となっている。また、切迫性が高まっている南海トラフ巨大地震や首都直下型地震、激甚化する自然災害が発生した場合、毎週三回の通院を要する透析患者には、透析医療の確保、避難所での対応、通院手段の確保などについて平時の対策が重要になる。腎臓病の早期発見、十分な保存期治療を求めるとともに、腎代替療法が必要となった場合の十分な説明と同意、そして、いつでもどこでも誰でも透析が受けられる社会を維持しつつ、高齢化対策、就労支援、災害対策についても万全を期すことを求める。さらに、臓器移植については一層国民の理解が進むような普及啓発、国内での移植件数を最大化させる施策の推進とともに、再生医療の研究が進むことを求める。
 ついては、国民を腎疾患から守る総合対策として、次の措置を採られたい。

一、腎臓病の早期発見と重症化予防、透析患者及び腎移植患者を含む慢性腎臓病患者の生活の質の向上のため、「腎疾患対策検討会報告書に係る取組の中間評価(令和五年十月)」に記されているように、医療機関間の紹介基準などの普及及び連携強化などを更に推進すること。
二、透析患者であっても、安心して介護保険施設に入所できるよう、令和六年度介護報酬改定において送迎に関する加算が設けられたが、透析施設と介護施設の連携体制の更なる整備に向け、人的・財政的措置を引き続き検討すること。
三、透析患者の高齢化や障害の重度化により通院困難者が増えている。国と地方自治体が連携し、通院を支援する体制を整備するよう努めること。
四、医療者の高齢化などによる医療者不足により、透析施設の閉鎖、夜間診療の中止、入院受入れの中止などが余儀なくされている地域に、遠隔医療の導入などにより透析医療を確保するための対策を講じること。
五、生産年齢世代の透析患者の就労による社会参加を促進するため、透析患者の治療と就労の両立のための支援対策を推進すること。
六、近年、全国各地で地震・風水害などによる甚大な被害が頻発している。透析患者の通院支援・透析医療の確保など、要支援者に対し迅速な対応をし、広域に停電や断水が発生した場合は隣接する都道府県において、透析患者を受け入れられる体制を確立すること。
七、臓器移植及び再生医療研究の更なる促進に努め、実用化に近い腎臓再生医療の研究については体制のより一層の充実を図ること。

一覧に戻る