請願

 

第217回国会 請願の内閣処理経過

件名 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願
新件番号 1241 所管省庁 厚生労働省 内閣処理経過受領年月日 R7.12.9
処理要領 一 難病の原因究明等の研究のため、厚生労働科学研究費補助金の難治性疾患政策研究事業等に取り組んでおり、また、治療体制の確立に向けて、都道府県に対して難病の医療提供体制を整備するための経費を補助し、難病診療連携拠点病院等の整備を支援している。
  また、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号。以下「難病法」という。)第五条に基づく指定難病の対象となる疾病については、難病法施行時である平成二十七年一月一日時点の百十疾病から令和七年四月一日時点で三百四十八疾病まで拡大したところである。引き続き、難病施策の推進に取り組んでまいりたい。
二 難病患者や小児慢性特定疾病児童等については、医療保険における高額療養費制度だけでなく、難病法や児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に基づく医療費助成制度により、更なる経済的負担の軽減を図っているほか、小児から成人への移行期医療支援のため、都道府県の移行期医療支援体制を整備するための経費の補助を行っている。
  また、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備及び一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組を進めている。
  その上で、合理的配慮については、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないこととされており、文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(平成二十七年文部科学省告示第百八十号)等を、各教育委員会等に周知している。
  また、医療的ケアが必要な子供については、学校において安心・安全に学ぶことができるよう、医療的ケアを行う看護職員の配置に係る財政支援の拡充のほか、学校における医療的ケアの実施体制の充実を図ることを目的とした調査研究事業を実施している。
  さらに、病気療養児のICTを活用した学習環境については、従来の同時双方向型授業配信に加え、令和五年四月から、児童生徒が視聴したい時間に受講するオンデマンド型の授業配信を可能とする制度改正を行っており、ICTを活用した遠隔教育の充実普及に努めている。
  学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業において、長期療養者を含む障害者の学習環境の充実について、ICTを活用したモデルの実践研究や普及等にも取り組んでいる。
三 医療費等の負担軽減については、医療保険の高額療養費制度により、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないようにしており、加えて、難病患者については、難病法に基づく特定医療費助成制度により、更なる経済的負担の軽減を図っている。
  また、福祉サービスについては、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)に基づく障害福祉サービスを難病患者等も本人の状態に応じて利用が可能であり、人材の確保・研修の充実については、難病相談支援センターに勤務する職員等を対象とした研修の全国的な実施等に取り組んでいる。
四 創薬等に当たり、難病や長期慢性疾病の患者を含む国民の臨床研究及び治験への参画を推進するため、臨床研究及び治験に関する普及啓発や、臨床研究及び治験の情報に関するデータベースの充実に取り組んでいる。
  ゲノム医療の教育及び啓発の対応等の推進については、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律(令和五年法律第五十七号)に基づき策定したゲノム医療施策に関する基本的な計画(令和七年十一月二十一日閣議決定)を踏まえ、取組を進めてまいりたい。
  専門医療と地域医療の連携については、難病が疑われながらも診断がつかない患者について、患者本人や管内の医療機関からの診療相談に応じる難病診療連携コーディネーターを配置する等の取組を行っている。
  また、医療等の専門スタッフ不足等について、まず、医師の確保については、医学部定員を臨時的に増員しており、医師数は、令和四年までの十年間で、全国で約四万人増加してきた。また、医師偏在対策については、これまで、地域枠の設置等の医師養成過程での取組や、地域枠医師の配置調整や医師派遣等の医師確保計画に基づく取組を進めている。令和六年十二月末には、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定し、第二百十七回通常国会において関連法案を提出したところであり、関係者の御意見も伺いつつ、実効性のある取組を計画的に進めてまいりたい。
  次いで、看護師等の確保については、「新規養成」、「復職支援」、「定着 促進」を三本柱にした取組を進めており、就業する看護職員数は、平成二十三年から令和五年までの十二年間で、約二十五万人増加している。
  さらに、消費税増収分を活用した地域医療介護総合確保基金(医療分)については、令和七年度予算において、約九百九億円を確保しており、各都道府県における医療従事者等の確保等に資するため、地域の実情に応じて本基金を活用していただくこととしている。
  また、難病患者に対するリハビリテーションについては、訪問リハビリテーション及び介護予防訪問リハビリテーションについて特定医療費の支給対象とするとともに、在宅の難病患者の多様化するニーズに対応したホームヘルパーの養成支援を実施している。
  さらに、地域医療介護総合確保基金を活用した質の高い在宅医療の確保や、在宅医療に関する専門知識や経験を豊富に備え、地域で中心となって人材育成事業を支えることのできる高度人材の育成等の取組を進めており、引き続き、在宅医療の提供体制の充実に取り組んでまいりたい。
五 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)における「障害者」は、「心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされており、これに該当する難病患者に対しては、公共職業安定所において、様々な難病の特性に応じた助言ができる難病患者就職サポーターを配置し、個々の特性を踏まえた職業相談等を行っている。
  また、同法に基づき、事業主に対し、雇用の分野における障害者に対する差別を禁止するとともに、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置の実施を義務付けており、その取組を推進する観点から、「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A第三版」及び「合理的配慮指針事例集第五版」をホームページにおいて公表する等、事業主に対して広く周知を行っている。
  引き続き、こうした難病患者の特性に応じたきめ細かな支援や事業主に対する周知啓発の取組を進めてまいりたい。
  なお、障害者雇用率制度については、事業主が社会的な責任を果たすための前提として、対象範囲が明確であり、公正性及び一律性が担保されることが必要であること等から、現在、当該制度の対象障害者の範囲を、障害者のうち、同法に規定する身体障害者、知的障害者及び精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。)である労働者としている。当該労働者に該当しない難病患者の障害者雇用率制度における位置付けについては、令和四年六月に労働政策審議会障害者雇用分科会で取りまとめられた「今後の障害者雇用施策の充実強化について(労働政策審議会障害者雇用分科会意見書)」において、「個人の状況を踏まえることなく、一律に就労困難性があると認めることは難しい」ことを踏まえ、「雇用率制度における対象障害者の範囲に含めることをただちに行うのではなく、手帳を所持していない者に係る就労の困難性の判断の在り方にかかわる調査・研究等を進め、それらの結果等も参考に、引き続きその取扱いを検討することが適当」とされたことから、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において「難病患者の就労困難性に関する調査研究」を実施するとともに、令和六年十二月から開催している「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」において、難病患者の当事者団体を含む関係団体からのヒアリングの結果も踏まえた検討を行っており、引き続き、必要な対応を行ってまいりたい。
六 難病患者等の療養生活の質の維持向上を図るため、難病患者等に対する必要な情報提供及び地域交流会等の活動に対する支援を行う難病相談支援センター等の取組を推進している。
  また、各都道府県等に設置された難病相談支援センターの活動を支援するため、同センターに勤務する職員等を対象とした研修の全国的な実施等に取り組んでいる。
  今後も、都道府県等と難病相談支援センターとの連携強化及び相互支援に取り組むとともに、難病に対する国民の理解が促進されるよう、難病に係る広報等を行ってまいりたい。

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