請願

 

第213回国会 請願の要旨

新件番号 2489 件名 精神保健医療福祉の改善に関する請願
要旨  精神科を受診する人は年間四百二十万人を超える水準となっており、誰でも安心して気軽にかかれる精神医療の充実は国民的な課題となっている。日本の精神医療は、地域移行が進んだ諸外国に比べ半世紀以上も後れを取り、施設療養生活中心となっている。日本の精神科病院は、一九五八年の厚生省事務次官通知(精神科特例)から続く少ない人員配置基準や低い診療報酬体系の下、長期入院患者で病床を満杯にすることにより経営を成り立たせる状況がつくられてきた。このことが精神疾患に対する差別・偏見を社会に根付かせ、当事者の合意が得られない入院や医療提供が一般的に行われるなどの人権侵害をもたらしており、入院中心から地域生活中心への転換が進まない要因にもなっている。二〇一四年に批准した国連の障害者権利条約に基づいて行われた日本政府への勧告(二〇二二年十月)でも、この点について懸念が表明され改善が求められている。人権に配慮した良質な精神医療の提供を可能にするための人員配置とそれに見合った診療報酬を実現するとともに、精神疾患や認知症を持つ人が地域で希望する生活を送れるようにするため、国と地方自治体の責任で早期に包括的で継続的な地域の支援体制を法制化する必要がある。
 ついては、全ての人の人権が尊重され、精神疾患があっても地域社会の一人として安心して暮らし続けることができるよう、次の事項について実現を図られたい。

一、人権に配慮した良質な精神医療の提供を可能にするために、一般病床より低い人員配置を認めている医療法施行規則を改め、精神病床の人員配置を一般病床と同等以上に引き上げること。
二、国連・障害者権利委員会による日本政府への勧告を尊重し、患者・当事者の合意のない入院や治療、身体拘束や隔離の禁止、及び無期限の入院制度の廃止を法制化すること。また、患者の人権を擁護するための第三者による監視機構の確立など精神保健医療福祉制度の抜本的改善を行うこと。
三、精神科病院の入院患者が、COVID―19を始めとする感染症やその他の疾病を発症した際に、適切な環境で治療を受けることができていない実態を改善すること。
四、精神疾患や認知症を持つ人が地域で希望する生活が送れるように、包括的で継続的な地域の支援体制を法制化すること。また、早期に充実を図るために、精神保健福祉予算を拡充するとともに労働者の雇用保障、教育や研修についても国が責任を持って行うこと。
五、精神疾患に対する差別・偏見をなくすための啓発を進め、施策を講じる際には当事者・家族の声が十分に反映されるよう、当事者団体などの参加を要件とすること。また、患者を持つ家族の負担軽減や孤立を予防するため、社会全体で支える体制を構築・拡充すること。

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