新件番号 | 1083 | 件名 | アイヌ政策見直しに関する請願 |
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要旨 | 北海道によるアイヌ生活実態調査によると、アイヌの人は二〇一三年には一万七千人、二〇一七年には一万三千人に激減している。また、アイヌ語を話せる人は現在はほとんどいない。これは、政府のアイヌ政策がウポポイの運営といった行政に切り取られたアイヌ文化に特化し、世帯収入で全国平均と百八十万円も格差のあるアイヌ民族の貧困問題や同化強制、アイヌヘイトなどを無視してきた結果である。アイヌ民族の誇りが尊重される社会は実現されていないと言わざるを得ない。二〇二四年のアイヌ施策推進法の見直しで、アイヌ民族がアイヌとして誇りを持って生き暮らせる社会を実現するよう政策の見直しを求める。 ついては、次の事項について実現を図られたい。 一、アイヌ民族を「先住民族の権利に関する国連宣言」に規定された属性を持つ先住民族として認めること。 二、アイヌ施策推進法第四条のアイヌ差別禁止条項が実効性を持つために、国及び公共団体の責務としてのアイヌ差別撤廃を明記し、教育及び広報、相談体制、アイヌ差別実態調査、罰則規定を入れた法律改正を行うこと。 三、アイヌ民族に対する強制移住や、アイヌ民族が狩猟・漁労・採集に使用していた土地、アイヌ民族に下付した土地などアイヌ民族の土地所有権の推移、また、教育問題を含むアイヌ民族差別の歴史的・総合的な実態調査を行い、アイヌ政策の見直しを行うこと。 四、現行の交付金制度について、政府及び市町村とアイヌ民族各団体との協議機関を設置して、アイヌの自発的意思が尊重される制度とすること。また、その一部をアイヌ民族の自立化資金とすること。 五、アイヌ民族の宗教観、世界観に基づいて国有林野の利活用やサケの採捕事業などをアイヌ民族の管理下に置くこと。アイヌの主食であったサケ漁に関しては、少なくとも儀式、自家食、文化伝承、そして将来的な商業利用も視野に入れた漁業権を保障すること。 六、初等・中等教育において、アイヌ語、アイヌ民族(歴史・文化)、アイヌ民族の人権に関する学習を教育課程に位置付け、学習指導要領における「外国語」又は「国語」にアイヌ語を設けること。高校では社会科にアイヌ史を設け、所定の単位を履修した者には「アイヌ語」「アイヌ史」の教員免許状を授与すること。国は高等教育機関にアイヌ民族に関わる専門的な研究、教授のための研究科、学部などの設置を計画し、保護者、地域から要求がある場合にはアイヌの誇りを体感、体得できる学校を設立すること。 七、アイヌ遺骨はアイヌの先祖であり、民族の誇りの源泉である。国及び大学、博物館、研究機関などはアイヌ遺骨盗掘の事実を認めアイヌ民族に謝罪すること。あわせて、アイヌ民族に関わる遺骨収集の歴史的経過を明らかにする実態調査を行い、留置してきた遺骨及び副葬品などを目録化するとともに関連資料を一般公開すること。また、国の責任でアイヌ遺骨の全てを出土地に返還し再埋葬すること。 八、北海道内外のアイヌ民族の間にある福祉対策などの差別を是正すること。 九、国連女性差別撤廃委員会の勧告を完全に履行すること。アイヌ女性に対する複合差別撤廃に向けて、政治的・公的活動への平等な参画の権利保障、国及び地方公共団体による教育、雇用への支援と女性に対する暴力、ヘイトスピーチなどを禁止・処罰する法律の制定を行うこと。 十、包括的差別禁止法の制定、パリ原則(一九九三年国連総会決議)に即した国内人権機関の設置を行うこと。 |