請願

 

第211回国会 請願の要旨

新件番号 2028 件名 精神保健医療福祉の改善に関する請願
要旨  精神科を受診する人は年間四百二十万人を超える水準となっており、誰でも安心して気軽にかかれる精神医療の充実は国民的な課題となっている。日本の精神医療は、地域移行が進んだ諸外国に比べ半世紀以上も後れを取り、施設療養中心となっている。日本の精神科病院は、一九五八年の厚生省事務次官通知(精神科特例)から続く少ない人員配置基準や低い診療報酬体系の下、長期入院患者で病床を満杯にすることにより経営を成り立たせるという状況がつくられてきた。このことが入院患者への隔離・身体拘束の常態化や、入院患者の約半数が非自発的入院であるなどの人権侵害をもたらすことにつながっており、入院中心から地域生活中心への転換が進まない要因にもなっている。二〇一四年に批准した障害者権利条約に基づいて行われた対日審査の総括所見(二〇二二年十月)でも、この点について懸念が表明され改善が求められている。人権に配慮した良質な精神医療の提供を可能にするための人員配置とそれに見合った診療報酬を実現するとともに、精神疾患や認知症を持つ人が地域で希望する生活を送れるようにするため、国と地方自治体の責任で早期に包括的で継続的な地域の支援体制を整備することが求められている。
 ついては、精神疾患があっても地域社会の中でその一員として安心して暮らし続けることができるよう、次の事項について実現を図られたい。

一、人権に配慮した良質な精神医療の提供を可能にするために、一般病床より低い人員配置を認めている医療法施行規則を改め、精神病床の人員配置を一般病床と同等以上に引き上げること。
二、障害者権利条約に基づく国連の対日審査における総括所見(勧告)を尊重し、患者本人の合意のない非自発的入院や隔離・身体拘束の廃止、患者の人権を擁護する監視機構の確立など精神保健福祉制度の抜本的改善を行うこと。また、精神科病院の入院患者が、COVID―19感染症の治療など適切な医療が受けられない実態を改善すること。
三、精神疾患や認知症を持つ人が地域で希望する生活を送れるようにするため、国と地方自治体の責任で早期に包括的で継続的な支援体制を整備し、患者が無期限に入院を強いられる状況を根絶すること。
四、入院中心から地域への移行を円滑に進めるために、精神保健福祉予算の拡充や労働者の雇用保障、教育・研修を国が責任を持って行うこと。
五、精神疾患に対する差別・偏見をなくすための啓発を進め、各施策に対しては当事者・家族の参加を義務化し、その声を十分に反映させること。

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