請願

 

第211回国会 請願の要旨

新件番号 1511 件名 長良川河口堰のゲート開放等に関する請願
要旨  一九九五年七月、長良川河口堰(かこうぜき)のゲートが閉鎖され、利水、治水、環境のあらゆる面でますます重大で深刻な問題が起きている。第一に、そもそも長良川河口堰の建設目的は、数十年前、中部財界の提唱で伊勢湾臨海工業地帯への工業用水を確保することであった。ところが、工業用水の需要はいまだにゼロである。そこで国土交通省など(以下「当局」という。)は利水の実績づくりのために上水として愛知県・知多地方などに住民の意思を無視して取水口を強引に河口堰に切り替え給水する(利水計画全体の一六%)など、利水計画が完全に破綻していることは今や明白である。第二に、水余りの現実に直面して当局は途中から建設目的の中心は治水であると強弁してきたが、既に治水上必要なしゅんせつは終了して堰は不要となっており、かえって洪水時や地震時(河口堰の直近に活断層が走っている)などには大変危険な構造物となっている。第三に、河口堰が及ぼす環境の面では、ゲート閉鎖後、汽水域が消滅し、堰上下流域にはヘドロが約二メートル堆積し、ヤマトシジミは絶滅し、ヨシ原も九〇%以上が消滅した。さらに、清流長良川のシンボルである天然アユは激減し、サツキマスの漁獲高も大幅に減少し、長良川をめぐる全生態系の破壊が進み環境悪化は深刻である。長良川河口堰が利水に無用、治水に危険、環境に有害であることは、もはや論をまたない。長良川沿川の主要な漁協や多くの釣り人、観光業とそれに関連する各種商工業は衰退の一途をたどり、一度ゲートを開放してほしいと切実な声を上げており、海抜ゼロメートル地帯の三重県桑名市長島町の住民は、洪水時や地震時に危険となる河口堰を取り払ってほしいと願っている。当局はゲートを上げると塩水が遡上し、農業への塩害が起きると言っているが、その実証的データは全くない。二〇一五年十二月、国連食糧農業機関は清流長良川の鮎を世界農業遺産として認定した。このことからも国・当局には、なお一層清流長良川に本物の天然アユが戻ってくるようゲートを開放することが強く求められている。
 ついては、世界に誇る清流長良川を取り戻すため、次の事項について実現を図られたい。

一、河口堰の運用見直しに向けた調査に着手し、農業用水を使用しない期間にゲートを試験的に開放して「塩害」について実証的調査を行うこと。
二、住民の意思を無視した強引な河口堰からの上水の給水を直ちに中止すること。
三、河口堰のゲートを開放し、もう一度、厳密で公正な環境アセスメントを実施すること。

一覧に戻る