請願

 

第211回国会 請願の内閣処理経過

件名 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
新件番号 543 所管省庁 厚生労働省 内閣処理経過受領年月日 R5.12.12
処理要領 一 新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)への対応については、令和五年五月八日から感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)上の位置付けが五類感染症に変更されたことに伴い、幅広い医療機関による自律的な通常の医療提供体制への移行に向けて、設備整備等の支援等を通じて、新型コロナに対応する医療機関の維持・拡大を促している。
  その上で、入院調整についても、原則として、医療機関間で調整が行われる体制に移行することとなるが、円滑な移行のため、都道府県の取組の実情に応じて、当面の間、都道府県に「入院調整本部」等の枠組みを残すことを可能としている。
  透析患者については、都道府県において、関係団体のネットワークなど、入院先の調整等を行うための仕組みが構築されていることから、こうした既存の調整の枠組みへの移行を進めている。
  引き続き、慢性腎臓病を含む基礎疾患を有する方等の重症化リスクの高い患者に必要な医療が提供されるよう、取り組んでまいりたい。
二 腎臓病の早期発見と重症化予防については、政府としては、平成三十年七月に腎疾患対策検討会で取りまとめた「腎疾患対策検討会報告書」に基づき、総合的な腎疾患対策を実施している。
  具体的には、本報告書において、重症化の徴候がある際に速やかに専門医に紹介し、早期に適切な介入を行うことで重症化を予防できるよう、かかりつけ医から腎臓専門医療機関、糖尿病専門医療機関等への紹介基準を普及すべきであるとされていることを踏まえ、厚生労働科学研究において、医療機関間連携の好事例の把握等をしつつ、当該紹介基準の関係者への普及等に努めている。また、腎臓病の早期発見につながるよう動画等を用いた効果的な普及啓発資材を作成したほか、慢性腎臓病患者に特有の健康課題に適合した多職種連携による生活・食事指導等の実証研究において、実態調査やエビデンスの収集を進めている。
  さらに、総合的な腎疾患対策を推進するため、都道府県等における患者等一般向けの講演会等の開催や医療関係者を対象とした研修の実施等に係る補助事業において、慢性腎臓病に関する正しい知識の普及や対策に必要な人材育成等を引き続き推進するとともに、慢性腎臓病の重症化予防のための診療体制の構築や、多職種連携による療養指導等を行うためのモデル事業を実施している。
  また、令和五年十月には、「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」において「腎疾患対策検討会報告書(平成三十年七月)に係る取組の中間評価と今後の取組について」を取りまとめたところであり、この内容を踏まえ、引き続き、必要な取組を進めていく。
三 介護保険は、要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」という。)により要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)であると認められた介護保険の被保険者に対して、介護サービスに係る保険給付を行うものである。六十五歳以上の者は原因を問わず、四十歳以上六十五歳未満の者は糖尿病性腎症等の加齢に伴って生じる疾病が原因で要介護状態又は要支援状態になったときに、要介護認定等を受けることができ、要介護者等と認められた腎臓病患者は、必要な介護サービスを受けることが可能である。
  介護保険施設のうち、特別養護老人ホームについては、令和三年度及び令和四年度の老人保健健康増進等事業において、透析が必要な方も含む入所者の医療ニーズの実態、外部の医療機関との協力・連携体制等について調査研究を実施した。特別養護老人ホームにおける医療ニーズへの対応については、こうした調査結果等を踏まえ、令和六年度介護報酬改定に向けて議論を行っているところである。
  なお、いわゆる血液透析や腹膜透析については医療保険の対象となっており、介護老人福祉施設や介護老人保健施設に入所している要介護者等についても、透析に係る費用は医療保険から給付されるとともに、月々の医療費の負担が過重とならないよう自己負担限度額を設けているほか、人工腎臓を実施している慢性腎不全の患者については、自己負担を更に軽減し、限度額を月額一万円(七十歳未満で、所得の額が一定以上の者は二万円)としている。また、高額介護合算療養費制度により、医療保険と介護保険における自己負担額の合計額が高額になる場合に、その負担を軽減する仕組みを構築している。   
四 地域における移動手段として透析患者が利用できるものの確保については、地域の実情に応じて、地方公共団体等が中心となって様々な事業が行われているほか、要介護認定等や障害福祉サービスの支給決定を受けた透析患者は、介護保険制度又は障害福祉制度により居宅から医療機関に通院する際の介 助等のサービスを受けることが可能である。また、透析患者等をはじめ障害を有する等により単独での移動が困難である者については、タクシー・福祉タクシーに加え、市町村、NPO法人等が自家用車を用いて実施する福祉有償運送も利用できるよう、地域における移動手段の確保に向けた取組を推進してまいりたい。
五 災害時における人工透析の提供体制については、「厚生労働省防災業務計画」(平成十三年二月十四日厚生労働省発総第十一号)に定めるとともに、東日本大震災の教訓を踏まえ、公益社団法人日本透析医会災害時情報ネットワークシステムの機能強化に対する補助を行い、災害時の透析患者の受入体制の充実を図ったところである。令和五年六月二十九日からの大雨による災害等においては、同ネットワークシステムを通じ、国、地方公共団体及び公益社団法人日本透析医会が連携して、人工透析の提供体制の確保に努めたところである。
  また、腎疾患政策研究事業において、令和五年度から、災害時や感染症流行下にも対応可能な慢性腎臓病の診療体制の確保等に資する研究を行っている。
  引き続き、地方公共団体及び公益社団法人日本透析医会と連携するとともに、腎疾患政策研究事業を通じて得られた知見を踏まえ、災害時の透析患者の受入体制の整備に取り組んでまいりたい。
六 腎臓移植を含めた移植医療の推進については、国民への普及啓発を実施するとともに、令和五年度においても、臓器提供施設の整備及び連携体制の構築のため、臓器提供に関する情報提示の推進や院内マニュアルの整備等及び臓器提供事例の多い施設が当該事例の少ない施設に対して行う研修等の支援を実施している。
  また、国内における臓器移植の更なる推進のため、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において、臓器移植医療対策の在り方について御議論いただき、令和四年三月に、提言が取りまとめられたところである。政府としては、当該提言の内容を踏まえて、国内における臓器移植の更なる推進に向けた施策の充実を図ってまいりたい。
  再生医療については、令和五年度予算において、実用化に近い臨床研究を重点的に支援する経費等を計上し、研究体制の充実を図っている。
  再生医療の研究の推進に資するよう、引き続き、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)及び再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)の規定に基づき、制度の円滑な運用に努めてまいりたい。

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