請願

 

第208回国会 請願の要旨

新件番号 2589 件名 学費は無償、奨学金は給付とし、権利としての無償教育を求めることに関する請願
要旨  二〇一二年九月、日本政府は、幼稚園から大学院まで全ての教育段階において無償教育を実現すると国際公約した。十年目を迎えたが、政府はいまだに無償化のロードマップを示さず、教育への公財政支出は経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち対GDP比平均(二〇一八年)四・九%に対し、日本は四・〇%と低水準のままである。コロナ禍の生活難・修学難が二年の長期にわたる中、無償教育の実現は急務の課題である。文部科学省の調査では、二〇二一年四~八月にコロナを理由に大学や短大を中退した学生は七百一人で、前年同期間に比べ約一・八倍、同年八月末時点のコロナを理由とした休学者は四千四百十八人で前年同期比約一・六五倍に増大している。岸田政権は、コロナで困窮する学生への現金給付を掲げたが、その規模は前回と同程度である。文部科学省調査(二〇二一年三月)では、前回の緊急給付金を利用したと回答した学生は、僅か七・二%だった。給付対象を厳しく限定した上で学校単位の枠をはめ、困窮する学生の中から更に困窮度を競わせる政府の態度は、親や学生の間に分断と対立構造をつくり、救済を求める手を萎縮させている。二〇二〇年度私立大学初年度納付金(授業料、入学料、施設設備費の合計)は、対前年度比一・二%増の百三十五万六千二百二十三円と過去最高額になった。学費の高騰が続き、オンライン授業による学生負担が増える中で、岸田政権は、稼ぐ大学支援のための十兆円規模の大学ファンド開始、民間利活用を目的とした教育のデジタル化、そして出世払いと称する新たな学生ローンの創設など受益者負担の教育政策を進めている。二〇二一年十月の総選挙に向けて全政党に送付した公開質問書の中で、無償教育実現の具体的計画をつくること、OECD平均水準に教育予算を引き上げることに対して反対する政党はなかった(九政党中八政党が回答)。今こそ、教育を受ける権利として学費は無償にすること、奨学金は給付にすることの実現を強く求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、幼児教育から高等教育までの無償教育を実現するため、十年前に国際公約した国際人権A規約第十三条に基づいて、具体的計画をつくり立法化すること。
二、権利としての無償教育を実現し、給付奨学金を拡充するため、教育予算をOECD加盟国平均水準(対GDP比)に引き上げること。
三、当面、貸与奨学金の返還については、低所得者への返還義務を免除し、返還期間の上限を定め、超過した債権は原則償却すること。

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