請願

 

第208回国会 請願の要旨

新件番号 1605 件名 精神保健医療福祉の改善に関する請願
要旨  精神科を受診する人は年間四百二十万人に迫っており、誰でも安心して気軽にかかれる精神科医療の充実は国民的な課題となっている。しかし、日本の精神科医療は、諸外国に比べ半世紀以上も後れを取り、施設療養生活中心で、一般病院に比べて低医療費に抑えられ、医療スタッフの人員も極めて少ない状況である。以前から、疾患治療より社会防衛的な誤った観点が精神疾患に対する差別・偏見を助長し、世界的にも類を見ない長期にわたる社会的入院や隔離・身体拘束による人権侵害をもたらし、国際的にも批判を受けている。日本は、二〇一四年に障害者権利条約を批准している。全ての人の人権が尊重され、患者・利用者本位の精神保健医療福祉の改革を図ることが必要である。また、これまでの生活様式を根本から覆した新型コロナウイルス感染症の拡大は、国民のメンタルヘルスにも深刻な影響を与えている。厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センターのコロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)によれば、男性の経済的問題による自殺者は多いものの、無職や同居人のいる女性の自殺者が特徴的に増加しており、人と接する機会や場の減少やDV(ドメスティックバイオレンス)、育児の悩みなど様々な要因があるとしている。また、産後鬱も二倍程度に増加するなど、新たな生活様式に適したメンタルヘルス対策を構築することは喫緊の課題となっている。
 ついては、誰もが地域社会の中でその一員として安心して暮らし続けられるよう、次の事項について実現を図られたい。

一、良質な医療を提供し、隔離・拘束を原則廃止できるよう、精神科専門職の配置人員を引き上げること。一般病床より低い人員配置を認めている医療法施行規則を改め、精神病床の人員配置を改善すること。
二、精神疾患や認知症があっても、地域で安心して生活できるよう、早い段階から適切な支援と治療を受けることができる包括的で継続的な支援体制の整備を国が行うこと。また、差別・偏見をなくすための啓発を進め、施策には当事者・家族の声を尊重して反映させること。
三、入院中心から地域への移行を円滑に進めるために、精神保健福祉予算の拡充や労働者の雇用保障、教育・研修を国が責任を持って行うこと。
四、新型コロナウイルス感染症の拡大による新たな生活様式に対応したメンタルヘルス対策を早急に講じること。

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