請願

 

第208回国会 請願の要旨

新件番号 1117 件名 中国残留孤児・婦人二世の生活支援等に関する請願
要旨  一九四五年の日本敗戦時、中国残留孤児は幼くして中国(主に旧満州)に取り残され、四十歳、五十歳を超えて、また、中国残留婦人も五十歳、六十歳を超えて、ようやく祖国日本に帰国できたが、日本語も話せず、ふさわしい就職先もあっせんされないまま、低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、貧しい生活を強いられてきた。しかし、このような境遇は、国の満州移民政策や日本軍による民間人の置き去り、国の引揚事業の放置と遅れという戦前戦後の国策がもたらしたものであって、中国帰国者自身の責任によるものではない。そこで、二〇〇一年に残留婦人が国家賠償訴訟を起こし、また、二〇〇二年を皮切りに残留孤児の約九割、二千二百十一名が原告となって国家賠償訴訟を起こし、その結果、二〇〇七年に議員立法により、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(以下「新支援法」という。)が成立し、国民年金の満額支給と支援給付金の支給などを内容とした新たな支援策が取られることとなった。また、二〇一三年には新支援法が改正され、残留孤児・婦人と共に苦難を分かち合い、中国の父母兄弟と別れて日本に来た配偶者に対し、中国残留孤児・婦人が死亡した場合でも支援給付以外に国民年金の満額の三分の二相当額を支給する改善が図られた。しかし、新支援法による生活保障から中国残留孤児・婦人二世が除外されたことから、二世の中には三十歳~五十歳で帰国したため日本語も話せず、低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、高齢化を迎えた今日、かつての一世と同様に生活保護に頼らざるを得ない人も多くいる。また、生活保護受給者一般に対する厚生労働省の課長問答により、親族の冠婚葬祭、危篤の場合及び墓参などの目的で中国への渡航期間が二週間を超えた場合には収入認定により保護費が減額されるため、中国の家族との交流もままならない。このような二世の状況もまた、一世に対する国の引揚事業の遅延に加えて、国が一世と国費同伴帰国できる二世を未婚の二十歳未満に限定したこと、国がこれまで二世に対する有効な支援策を全く講じてこなかったことに起因するものであり、中国帰国者自身の責任と言えるものではない。
 ついては、残留孤児・婦人二世においても尊厳のある安定した老後生活が送れるよう、次の事項について実現を図られたい。

一、中国「残留孤児・婦人」二世に対しても、新支援法を改正して支援給付金と老齢年金の満額支給を適用するなどして、生活保護とは異なる老後の生活保障を行うこと。
二、私費帰国の中国「残留孤児・婦人」二世に対しても、新支援法に基づく自立支援通訳の派遣などの地域生活支援事業を利用可能とし、医療・行政サービス、日本語学習が容易に受けられるようにすること。
三、生活保護受給者一般に対する厚生労働省の課長問答により、中国渡航期間が二週間を超えた場合に収入認定する生活保護の運用を中国「残留孤児・婦人」二世に適用しないこと。

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