請願

 

第208回国会 請願の要旨

新件番号 48 件名 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律の再検討に関する請願
要旨  平成二十二年四月施行の刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律は殺人等の凶悪、重大事件の時効の取扱いについて検討されたものであるが、被害者が殺害された事件だけに注目が置かれて時効が撤廃、延長され、重篤な障害が残った被害者がいる事件は、凶悪、重大事件であっても傷害罪などの軽微とされる罪と混同され、排除されてしまい、対象とならなかった。凶悪、重大な未解決事案について、時効撤廃等をもって長く捜査に臨むことができる環境を整えるため、再度、刑法及び刑事訴訟法の十分な検討を行い、早期に法律を再改正することを強く求める。現在は新型コロナウイルス感染症の影響を受けているが、本来なら日本の国際化が進む中で多くの人々の出入国があり、観光産業等の発展という光の部分がある一方、裏側にはテロや犯罪等の危険性の増加という闇の部分も存在している。また、5G、後の6Gでの通信機能の進化、ネット通信やそれに付随した技術の更なる発展による利便性が際立っているが、その機能があらゆる面で悪用されるという危険性も考えられる。そういった複雑な社会の中で、誰もが犯罪の被害者になる可能性がある。殺人等の重大事件が発生した場合、犯人が逃走してしまったら事件の公訴時効期間が決められるが、その有無は事件の内容ではなく、被害者の生死で線引きされている。死亡した被害者がいない事件は、どれだけ多数の重篤な障害が残る被害者が出た凶悪、重大な殺人未遂事件であっても、現行法では時効があることになる。殺人等の凶悪、重大な事件であり、たまたま奇跡的に被害者が生存していたという状態であっても未遂事件として扱われ、被疑者は二十五年、身勝手に逃げ続けただけでその行為は法により尊重され、犯人の逃げ得になるという状況が現存している。刑法では、人を殺した者は死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処するとされ、未遂でも罰するとなっている。強盗殺人は更に重罪である。刑法で既遂、未遂に差がないにもかかわらず、事件捜査の段階での既遂、未遂で公訴時効の期間に差が付き、それが事件捜査の扱いの差になっているところにも矛盾がある。日本国憲法でも、世界人権宣言でも、人は法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有するとされている。現状では、未解決事件の被疑者は逃走という身勝手な行為の状態が尊重され、逃げ切って時効になると罪に問われることはなくなり、自由を手にすることになる。一方、重篤な障害が残った被害者は、時効によって自由が戻ってくることはなく、重篤な障害の状態が良くなることもなく、さらに犯人だけが自由になったという屈辱的二次被害を加えられ、ずっと苦しめられ続けるのである。この点において、犯罪被害者の人権は被疑者の人権と同等とはとても言えない。平成二十二年の法改正から十年以上たっている。当時、附帯決議で後の検討の必要性があるとされていたが、附則にそのことを加えなかったため、今まで一度も見直しや検討などが行われず、犯罪被害者が法の保護を受けられなかった等、様々なゆがみが生じている。時効撤廃が適用となった事件は、百年、二百年、三百年と犯人が生存不可能である時間が過ぎても、現行法では時効撤廃の解除に関する規定がない。また、致死事件や交通死亡ひき逃げ事件等未解決事件の公訴時効の扱いについて、事件を扱う警察によって異なる公訴時効期間に変更するという犯罪被害者側からは人権侵害と取れる扱いがあったり、一部の犯罪被害については改正への手続がどんどん進んでいったり、これは様々な犯罪とその被害者の実情等と法が合わなくなってきていると言える。様々な犯罪被害者の声を聞き、その置かれた状態に国がしっかりと向き合い、事件によって苦しんでいる被害者が時効によって二次被害で苦しむことのないよう、一過性ではない継続的な見直しと検討が行われ、それが法律の再度の改正につながることを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、殺人等の凶悪、重大事件により、被害者が重篤な障害を負った未解決未遂事件で、公訴時効の撤廃等を含めた検討と見直しを行い、法の再改正を行うこと。
二、未解決事件の被害者のために公訴時効はどうあるべきなのか、犯罪被害者の真の救済のための、一過性ではない継続的な施策の検討を行うこと。

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