請願

 

第204回国会 請願の要旨

新件番号 1155 件名 人名用漢字の拡充に関する請願
要旨  日本国は、古くから漢字と共に文化を育んできた国である。国号はもちろん、日常生活に用いる文書にも漢字が使われる。その中でも取り分け重要なのが、多くの人名にも漢字が用いられているということである。保護者が子の誕生に際し出生届を出すときに、どのような漢字を用いるかが注目される。もちろん発音も重要だが、漢字は一つ一つに意味があり、親の思いもこの漢字に込められることが大多数である。人名の語感と意味との両方を重要視することは、現行の漢字文明圏はもちろん漢字を廃止した朝鮮半島やベトナムでも現存しており、東亜世界全体にまたがる国際的な風習である。元来は各家庭の親が子に対し思い思いに与えていた漢字も、第二次世界大戦後は厳しく制限が加えられてしまった。漢字伝来以来第二次世界大戦まで長い間用いられてきた漢字の多くも、不当なまでに制限されている。命名とは親が子に与える最初の贈物とも称される、個人にとっても大切な儀式である。これを政府が不当に制限することは、日本国憲法第二十一条の表現の自由にも反することであり、即座に改善を図るべきである。本来ならば古代中国以来使われてきた全ての漢字を人名用漢字とみなすべきだが、非現実的であるため、以下の九字を中心に議論し、戸籍法施行規則を改正することにより人名用漢字を拡充することを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、以下の漢字は日本の歴史においても、大陸部の漢字文明圏においても用いられてきた漢字であり、即座に人名用漢字としての登録をすること。
 1 玻
   上記の字は水晶や石英を指す漢字で、「瑠璃も玻璃も照らせば光る」との言い回し等に使われる。また「無量寿経」のような有名な仏典でも使用される漢字であり、仏教徒を中心に日本国民に親しみのある漢字だと言える。最高裁判所は平成二十二年にこの字を平易とは認めなかったが、この事例についての報道が多くなされ、多くの国民が関心を寄せたためにこの漢字が周知されることとなった。またこの後に裁判を経て追加された「巫」(平成二十七年)や「渾」(平成二十九年)に関する報道の際にも、やはり「玻」に関する言及が多くなされ、もはや多くの国民が知る平易な字となっている。現状を鑑み、「玻」の人名用漢字への追加を求める。
 2 什(日什、鳩摩羅什)
   騏(平沼騏一郎、洪心騏)
   晁(谷文晁、晁補之)
   阮(箕作阮甫、阮必成)
   甫(箕作阮甫、杜甫)
   巍(中村巍、喬巍)
   汪(出口汪、范汪)
   溥(山内溥、愛新覚羅溥儀) 「博」や「簿」と同じく、「甫」の部分を改めるべき
   以上の漢字は、日本でもその他の漢字文明圏でも人名に使用された例があるものである。東亜を広く見ると、尊属を含む目上の人の名前と漢字がかぶることは避けるべきことであり、いわゆる「下の名前」を指す「諱」が「いみな(忌み名)」と呼ばれるのもこれに由来する。しかし島国である日本は独特な慣習を生み出した。それが一族で代々同じ字を受け継ぐ「通字」であり、身分が上位の者が下位の者に諱の一字を下賜する「偏諱授与」である。現在も、偉人にあやかった名前を子供に名付けたいと考える親は多く存在する。しかしその偉人が国外の生まれであったり、現行の人名用漢字制度が制定される以前の生まれの者であったりすれば、彼らからの命名が難しくなる。後に改名することとなったとしても、出生時の名称は人生の中で自意識においても対外的な認識においても強く認知されることとなり、親の意図したところがその命名に反映されないことは悲劇である。「軾」(蘇軾)「坡」(蘇東坡)等も義務教育や高等教育で触れるため、多くの国民の知る字ではあるが、やはり人名では用いることができない。いびつな現状を正すために、少しでも早く上記の字を人名用漢字として認定することを求める。

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