請願

 

第203回国会 請願の要旨

新件番号 833 件名 種苗法改正の慎重審議又は取下げを求めることに関する請願
要旨  令和二年一月二十日に召集された第二百一回国会に提出された種苗法改正案(以下「改正案」という。)では、今まで農家に認められてきた登録品種の自家増殖が、許諾制(一律禁止)になることで、日本の農家の大半を占める小規模農家に、許諾手続の費用又は種苗を毎年購入する費用負担が掛かる。政府は、現在の種苗価格ではそれほど大きな負担にならないと言うが、五年後十年後も同じである保証はなく、農家への経済的負担が農業衰退に拍車をかけるおそれがある。農業が衰退し、農家が種を買わなくなれば、結果的に種苗会社も衰退することになる。農林水産省は、改正案の目的を日本国内で開発された品種の海外流出防止のためと言うが、登録品種の許諾制で可能になるのは契約者への賠償請求のみで、海外で品種登録する以外に海外流出を防ぐ方法がないことは、農林水産省自身も認めている(農林水産省「種苗をめぐる最近の情勢と課題について」)。今回の改正案で、海外流出を防げないことは明らかであり、政府の言う法改正の目的は矛盾している。農林水産省は、在来種・固定種はこれまでどおり自家増殖できるので大丈夫と言うが、現在、在来種・固定種を保護する法律はなく、今後、種苗会社が同じような品種を登録した場合、元々在来種・固定種であったものも登録品種とみなされ、自家増殖を禁止される可能性が十分にある。登録品種か否かは特性表に照らし合わせた判断でしかないため、裁判は登録者側に有利になり、その結果、小規模農家が萎縮して、在来種・固定種の扱いをやめたり、種取りを自粛してしまうことも考えられる。登録品種を保護し、種苗会社の育種権を守ると同時に、小規模農家の在来種・固定種の自家増殖権を守る法律も必要である。今、種苗市場は数社の多国籍企業が独占している。日本国内の種苗企業も、九割が費用の安い海外の種を育成している。地域の風土に合った在来種・固定種が減り、海外産や遺伝子組換え・ゲノム編集の種苗が増えると、化学肥料や農薬の多用につながり、生態系への悪影響や健康被害を招くおそれがある。また、日本の食料自給率が四〇%にも満たない中で、今回の新型コロナウイルスのパンデミックのような緊急事態が発生し、食料のみならず種苗の輸入まで止められたら、日本の食料の供給自体が危うくなる。子供たちの命と健康を守り、安心で安全な食を供給し続けるためには、日本の風土に合った種を守り、日本の食を支える小規模農家を守り、農業の多様性を維持していくことが不可欠である。今回の改正案は、農家に直接的に関わる法案でありながら、小規模農家への周知がほとんどなされておらず、余りに性急に審議が進められようとしている。日本も加入する食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)では、農民の種子への権利が明記され、農民の政策参加がうたわれている。小規模農家を交えた公聴会を開き、時間を掛けた慎重な審議が必要である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、「種苗法改正」の内容が、その目的の矛盾点、及び法改正後の日本の食の安全と地域経済の維持を妨げるおそれがあることから、慎重審議又は取り下げること。

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