請願

 

第203回国会 請願の要旨

新件番号 619 件名 種苗法改定の中止に関する請願
要旨  農林水産省は、二〇一八年三月末をもって主要農作物種子法を廃止したことに加え、今国会で種苗法改正案を成立させる方針である。改正案は、これまで原則として農家に認められてきた登録品種の自家増殖を許諾制にすることで事実上一律に禁止し、農家の種取り(自家増殖)の権利が著しく制限されることになる。同時に、許諾手続・費用若しくは種子を毎年購入しなければならないなど、日本の農業を支える圧倒的多数の農家にとっては新たに大きな負担が発生する。これは農家の経営を圧迫し、ひいては地域の農業の衰退を招きかねず、国連「家族農業の十年」や「農民の権利宣言」の精神とも相反するものである。農林水産省は、今回の改正が日本国内で開発された品種の海外流出防止のためであることを強調している。しかし、これまで農林水産省は、海外への登録品種の持ち出しや海外での無断増殖を全て防ぐことは物理的に困難であり、海外での品種登録を行うことが唯一の対策であるとしてきた(二〇一七年十一月、食料産業局知的財産課)。今回、海外での育成者権の保護強化のために国内農家の自家増殖を禁ずることに何ら必然性はない。改正案は、在来種(一般品種)を育成者権の対象外としているが、今後、一般品種が登録される可能性も否定できない。また、育成者権者にとっては大変有利である一方、農家を委縮させ、在来種の栽培や種取りを断念させる可能性もあり、多様な種子が失われ、消費者の選ぶ権利を奪うことにもなりかねない。地域の中小の種苗会社が資金的に品種登録をする余裕がない場合、高額な登録料を支払うことのできる特定の民間企業による種子の独占や市場の寡占化が進み、農家や消費者の選択肢をより一層制限することになる。自家増殖禁止は、地球規模での気候変動による食料不足が心配される中、食料自給率の低い日本においては食料安全保障の観点でも逆行している。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、地域農業や農家、消費者の権利を守り、安定した農作物・食料を確保する観点から、農家の権利を制限する種苗法「改正」を中止すること。

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