請願

 

第203回国会 請願の要旨

新件番号 295 件名 種苗法の一部改正案(自家増殖を原則禁止とする改正案)の取下げ等に関する請願
要旨  農林水産省が上程し閣議決定された種苗法の一部改正案(自家増殖を原則禁止とする改正案。以下「種苗法改正案」という。)については、二〇二〇年十月開会の第二百三回国会において、審議・採決される見込みとなっている。この種苗法改正案は、先に施行された主要農作物種子法廃止等と併せ、これまで国が担ってきた国民の生命の源である食糧の安定供給の役目を放棄し、民間企業や生産者である農業者へその責任を委ね、日本の食料安全保障を損なう法案となっている。これまで各都道府県が管理、関与することで安定して行われてきた主要農作物(米、麦、大豆)の種子の生産について、主要農作物種子法廃止(二〇一八年四月施行)に伴い、民間企業へ移譲を進める事態となっており、農業競争力強化支援法(二〇一七年八月施行)第八条においても、都道府県の持つ種苗の生産に関する知見を民間企業に提供するように義務付けている。これらの法改正により、農業者に安価で提供されてきた種子について、その生産の多くを利益優先の民間企業が占めることになり、種子価格の高騰につながることが懸念されている(民間企業の三井化学アグロ株式会社が開発した「みつひかり」の種子の販売価格は、都道府県が開発した種子のおよそ十倍になったこともある)。これに加え、改正種苗法が成立・施行され、農業者の自家増殖が原則禁止となれば、品種登録に必要な多額の資金を持つ民間企業の種苗に係る育成者権取得が進み、農業者が品種登録作物を栽培せざるを得ない事態となり、民間企業に対する自家増殖許諾料、又は毎年の種苗購入経費がかさむことで、日本農業の多くを占める小規模農業者の経営が圧迫されることは目に見えている。これらは、日本農業が抱える高齢化及び後継者不足とあいまって、農業者の減少に拍車をかけ、地域農業の衰退と共に日本の食料自給率の更なる低下へとつながり、農作物の市場価格の高騰及び他国からの輸入依存度の増加を導くおそれがある。そして、世界の種子の生産の七割を占める多国籍化学企業により遺伝子組換えやゲノム編集がなされた農作物が流通・増加し健康被害等が生じることにより、日本の食料安全保障が損なわれ、国民の生活にも大きく波及することが最も懸念される。農林水産省は、種苗法改正における自家増殖禁止の目的について、優良品種の種苗の海外流出による育成者権者の権利侵害を防止するためとしているが、これについては現行種苗法(第二十一条第四項)において、「当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めていない国に対し種苗を輸出する行為及び当該国に対し最終消費以外の目的をもって収穫物を輸出する行為」を制限しているため、多くの国(UPOV一九九一年改正条約批准国を除く)への海外流出防止の対応は可能である。また、農林水産省食料産業局知的財産課は、(独)農畜産業振興機構発行の広報誌(二〇一七年十一月号)において、「種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、海外において品種登録(育成者権の取得)を行うことが唯一の対策である」と説明している。よって、優良品種の海外流出については、現実的な対策以前に自家増殖を禁止することとして農業者に負担を強いる種苗法の改正でなく、農林水産省が主体となり他国における品種登録を行うことにより対応を進めるべきと考える。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、日本の食料安全保障が損なわれる懸念があるため、「種苗法改正案」の取下げと併せ、「主要農作物種子法」の復活、及び「農業競争力強化支援法」の廃止を行うこと。
二、種苗の優良品種の海外への流出防止については、種苗法改正ではなく、農林水産省による他国における品種登録での対応とすること。

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