請願

 

第201回国会 請願の要旨

新件番号 1891 件名 自家増殖を原則禁止とする種苗法改定に関する請願
要旨  農林水産省は、優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会で種苗法の現行制度の見直しを検討し、二〇一九年十一月、新品種保護に関する対策を取りまとめ、これを基に二〇二〇年一月二十日に召集された第二百一回国会に種苗法改正案を提出した。現行法で原則として農家に認められてきた登録品種の自家増殖を許諾制という形で事実上一律に禁止する改正案により、これまで認められてきた農家の種取り(自家増殖)の権利が著しく制限されると同時に、許諾手続・費用若しくは種子を毎年購入しなければならないなど、日本の農業を支える圧倒的多数の小規模農家にとっては新たに大きな負担が発生することとなる。これは農家の経営を圧迫し、ひいては地域の農業の衰退を招きかねず、国連「家族農業の十年」や「小農の権利宣言」の精神とも相反するものである。また、農林水産省は、今回の改正が日本国内で開発された品種の海外流出防止のためであることを強調しているが、シャインマスカットやイチゴのような海外への登録品種の持ち出しや海外での無断増殖を全て防ぐことは物理的に困難であり、海外での品種登録を行うことが唯一の対策であるとも認めており(二〇一七年十一月、食料産業局知的財産課)、海外での育成者権の保護強化のために日本国内の農家の自家増殖を禁ずる必要性はない。改正案は、在来種(一般品種)を育成者権の対象外としているが、一般品種が登録される可能性も否定できない。また、裁判の際には特性表に基づいてのみ判断するとされているため、育成者権者にとっては大変有利である一方、小規模農家を委縮させ、在来種の栽培や種取りを断念させる可能性もあり、その結果、地域で種子を守ってきた種取り農家と共に多様な種子が失われ、消費者の選ぶ権利を奪うことにもなりかねない。また、地域の中小の種苗会社が資金的に品種登録をする余裕がない場合、高額な登録料を支払うことのできる特定の民間企業による種子の独占や市場の寡占化が進み、農家や消費者の選択肢をより一層制限することになる。自家増殖禁止は育成者権を守るためのグローバルスタンダードであるとされているが、種子の多様性や地域に適した作物栽培を妨げかねず、地球規模での気候変動による食料不足が心配される中、食料自給率の低い日本においては食料安全保障の観点でも逆行している。地域農業や農家、消費者の権利を守り、安定した農作物・食料を確保する観点から、農家の権利を制限する種苗法改正の取りやめを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、自家増殖を原則禁止とする種苗法改定の取りやめを行うこと。

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