請願

 

第201回国会 請願の要旨

新件番号 1158 件名 ライドシェア(白タク)の合法化に反対することに関する請願
要旨  ハイヤー・タクシー産業は、二〇〇二年の規制緩和政策により、著しい供給過剰と熾烈(しれつ)な低運賃競争に陥り、公共交通機関の社会的使命というべき輸送の安全すら確保が困難な危機的状況に陥った。安全輸送にとって重要な運転者の賃金・労働条件も極限まで悪化したため、二〇〇九年にタクシー適正化・活性化特別措置法が成立し、二〇一四年一月から同改正法が施行され、地域限定・期間限定で供給過剰の是正と運賃の適正化、利用者利便の向上と活性化に向けた取組が進められている。こうした産業再生の取組の最中にもかかわらず、政府は、成長戦略の一つとしてシェアリング・エコノミーの推進に向けて、ライドシェアと称する旅客運送の資格を持たなくても有償での運送行為を合法化とする動きを加速させている。ライドシェアは、利用者と運転者との間で直接運送契約を結び、仲介事業者は運送責任を負わない。また、仲介事業者と運転者には雇用関係がないとされ、仲介事業者は運転者の労働条件に責任を負わない。ライドシェアの問題点は、このように道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則及び労働基準法を主とする労働関係法等の適用を逃れ、運送責任も雇用責任も負わないプラットフォームと言われる仲介事業者の下、運転者や車両に関する安全管理の保障もない旅客運送が行われる点にあり、輸送の安全・安心が確保されないのは諸外国の例を見ても明らかである。各種関係法令は、国民にとって安全な移動と女性や高齢者一人でも安心して移動できる手段として、種々の規制により厳格に守られてきた。ライドシェアとうたう移動形態の合法化は、それらを無に帰し、言わば自由に副業的にすることを法律で許そうというものである。国民の生活・生命を政治が保護するのであれば、ライドシェアのような危険で維持・継続もできない移動より、過去から法律にのっとった事業許可を取得し、永続的に国民の足となっているハイヤー・タクシーの発展を支えることが政府の役割であるのは明らかである。
 ついては、安全を置き去りにし、公共交通であるタクシー・バス産業などの破壊を引き起こすライドシェア(タクシー類似違法行為)の合法化に強く反対し、安全・安心の公共交通を維持、発展させるため、次の事項について実現を図られたい。

一、安全管理の保障もなく、公共性もない、一般の無資格者が旅客運送を担ういわゆる「ライドシェア」という移動媒体を、いかなる法律上でも合法化しないこと。
二、「生産性向上特別措置法」にある「プロジェクト型サンドボックス制度」では、参議院附帯決議にある「ライドシェア事業のような安全や雇用に問題が指摘される事業の実証については、規制法令に違反するものが認定されることのないよう厳に対応すること」の完全遵守を求め、ライドシェアの申請を認定しないこと。
三、「交通政策基本法」が制定され、自治体主導で地域の交通関係事業者の連携の下、地域交通計画の策定が始まり、その実現に向けた取組が始まっている。過疎地での「ライドシェア」導入に向けた動きはこうした政策と矛盾し、「交通政策基本法」をないがしろにするものと言わざるを得ない。また、各地域の自家用有償旅客運送運営協議会や地域公共交通会議の廃止という声も聞こえている。これは「ライドシェア」プラットフォームからの意見も入ってのことだと思われるが、運営協議会や地域公共交通会議は各地の関係事業者労使も入り、専門的な意見を述べ、前向きな議論をするための重要な会議である。万一、廃止すれば地域では「ライドシェア」が無尽蔵に入り込み危険が蔓延(まんえん)する結果を招くことは自明である。決して自家用有償旅客運送の拡大改定はしないこと。
四、昨年十月実施予定であったタクシーの本運賃改定が突如増税分のみ実行され、本運賃改定は本年二月にずれ込んだ。運賃改定分には運転者の労働条件向上原資や安全に掛けるコスト、利用者へのサービス原資も含まれている。今回、政府の対応は非難されるべきものであり、交通行政と業界労使との信頼関係が損なわれかねない問題であることを認識し、今後、タクシー業界に対しての一層の理解・支援を行うこと。

一覧に戻る