請願

 

第201回国会 請願の要旨

新件番号 461 件名 種苗法の改定に関する請願
要旨  我が国では、二〇一八年四月に主要農作物種子法が廃止され、都道府県が米、麦、大豆など主要農作物の種の生産・普及に責任を持つこれまでの体制に終止符が打たれるとともに、その前年に施行された農業競争力強化支援法により種子生産に関する知見を民間企業に提供することが公的な試験機関に対して義務付けられ、種子の開発、生産、普及に関する事業が公的機関から民間企業に移譲される事態となった。加えて、今国会に提出されている種苗法の一部を改正する法律案では、植物種苗の新品種開発を促進するため、種子の育成者権保護を目的として農家の自家採種・増殖を有料の許諾制にするとされている。こうした政策は、公的機関による種子の保全、育成及び供給を困難にし、種子開発生産の民間企業支配と独占に道を開くことになりかねず、農家の経済的負担が増大したり、農家による種苗の自家採種・増殖の権利を奪う可能性もあり、育成者権者からの権利侵害を理由とした訴えなどへの懸念で営農意欲をそがれ、後継者不足も重なって伝統的な日本の農業の更なる衰退をもたらすおそれがある。ひいては、食料の安全保障、種の多様性、環境の保全、地域の存続といった持続可能な経済社会の確立にとって、大きなマイナス要因ともなりかねないことが危惧される。そもそも、植物遺伝資源である種子は生きとし生けるものの命の根源であり、種子の安定的な供給は国民の生存権保障の義務を負う政府の役割である。その役割を、当該義務を負わず、何が国民にとって必須であるかより何が一番もうかるかを考えて事業を行う民間企業に委ねることは、政府の責任放棄と言っても過言ではない。
 ついては、種苗法改定に当たり、次の事項について実現を図られたい。

一、農業者が、登録品種の収穫物、種苗から得られる収穫物の一部を次期収穫物の生産のために種苗として用いる自家採種、増殖は、原則自由とすること。登録品種の育成者権者が種苗の栽培・採種・増殖に関わる限定条件を附帯した場合(許諾制など)は、農業者に対して、許諾料のようなものが発生しないよう措置すること。
二、農研機構などの公的な機関、また地方公共団体で育種・育成された、公共品種については、登録品種であっても、農業者による自家採種・増殖の権利を認めること。
三、新品種登録のための審査について、厳正、公平な審査が行われるよう、出願された品種を登録品種として認定するための機関に、農家や農民団体の推薦する代表者と、農業に関わる遺伝資源と分類に関わる生物学者が認定決定権に関われるよう措置すること。
四、種苗会社などの育種・育成者権者が、農業者に対して、権利侵害として、濫訴しないよう担保するため、権利侵害の立証は現物主義を原則とし、特性表を用いて権利侵害を立証する場合でも、農業者を訴える場合は、農家・農民団体の推薦者と、農業に関わる遺伝資源と分類に関わる生物学者も加えた、農林水産大臣諮問の第三者機関などを設置し、農業者に対する権利侵害で種苗会社や育種・育成者権者が訴える前に、機関に事前通知し、育成者権が及ぶ品種か否かを判定する制度を設けること。

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