請願

 

第201回国会 請願の要旨

新件番号 20 件名 ベンゾジアゼピン系薬物に関する規制強化の実施及び副作用による被害者の救済等に関する請願
要旨  向精神薬のベンゾジアゼピン系薬物(以下「BZD」という。)は、睡眠薬、抗不安薬及び抗てんかん薬、並びに多様な神経症状などの治療薬として日本国内では様々な診療科で幅広く処方されているが、一九七〇年代には副作用の薬物依存などが警告され、一九八〇年代には多くの諸外国で処方可能期間、処方可能用量又は処方対象疾患などの規制(ガイドライン等)が設けられている。一方、日本では長年にわたり臨床用量では薬物依存(常用量依存)は生じないと誤解されてきた結果、精神科以外の内科及び整形外科などにおいても多量のBZDが漫然と長期間にわたり処方され、BZD薬物依存の患者は国内に数十万人存在するとも言われている上、国際連合の国際麻薬統制委員会も二〇一〇年に日本ではBZDの不適切な処方があると警告しており、既に国内はベンゾジアゼピン(BZD)薬害の状態となっている。また、重大な副作用には、薬物依存のほか、離脱症状(けいれん発作、せん妄、うつ病、眼瞼(がんけん)けいれん及び遷延性の多様な離脱症候群等)及び奇異反応(鎮静作用とは逆の薬効の抑うつ、攻撃性、脱抑制等)があり、患者の社会生活全般に悪影響を及ぼし、中には脱抑制による自死患者が多数存在するとの調査結果が報告されている。しかしながら、長年、国内では臨床用量依存(常用量依存)は生じないと誤解されてきたため、服用患者が離脱症状又は奇異反応を発症しても患者の既往の精神疾患又は既存の疾患の再燃などと誤診され続けてきた。かかる状況下で、二〇一七年三月、諸外国に約四十年遅れて、ようやく厚生労働省はBZDの医薬品添付文書の改訂を指示し、BZDの添付文書が改訂され、国内でも医原性疾患の臨床用量依存(常用量依存)が認められ、離脱症状及び奇異反応の発症条件も改訂された。しかしながら、いまだに上述の諸外国で実施されている規制(処方ガイドライン等)は定められておらず、BZDの国内消費量削減への効果は限定的であり、また、副作用の被害者の救済対策も全く定められていない。そのことは、中央社会保険医療協議会総会(中医協第四百十七回、二〇一九年六月開催)において健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員が、これまで厚生労働省が施策により向精神薬の長期処方の適正化に取り組んできたにもかかわらず、(一)国内のBZDの消費数量が大きく変化していない点を厳しく指摘し、(二)健保連によるデータとして、BZDが向精神薬であるにもかかわらず五五%が精神科以外の診療科から処方されていること(三)BZDがかなり長期にわたって処方されていること(四)諸外国では累積処方日数を制限している国もあるが日本の対策は診療報酬の減算方式で甘いこと(五)今後、更に厳格な対応をしていく必要があることを強調していることなどから明らかである。(一)BZDの国内消費量の削減対策(二)BZD副作用を発症した患者の適正な治療などに必要な対策(三)BZD薬害の被害者救済の特別立法の制定を求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、BZDについて、厚生労働省による被害実態の把握、正確な副作用情報の提供、治療方法の研究、治療機関の設立及び専門知識を持つ医療者の育成等の実施、並びに被害者救済の特別立法の制定を行うこと。具体的な事項は次のとおりである。
 1 医療機関において他の依存性薬物と同等にBZDの管理を厳格化すること。
 2 BZDの処方期間、処方用量、対象疾患を規制するガイドライン等を制定すること。
 3 多種類のBZDの各力価の等価換算を義務付けること。
 4 処方前の患者同意書を義務付けること。
 5 処方前の既往疾患の特定によるBZDの副作用との区別を行うこと。
 6 BZDの減薬方法及び副作用の治療に必要な専門知識を持つ医療者を育成すること。
 7 正確なBZD副作用情報の提供を義務付けること。
 8 薬物依存及び離脱症状の治療費、並びに損害を補償すること。
 9 BZDの危険性の警告(ブルーレター等の発出)を行うこと。
 10 関連する依存性薬剤(オピオイド等)と合わせて一体的な規制を行うこと。

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