請願

 

第200回国会 請願の要旨

新件番号 204 件名 フィリピン残留日本人の国籍回復等に関する請願
要旨  戦争が終わって七十四年がたつ今も、救済されずに置き去りにされた日本人孤児がいる。日本人移民を父として、戦前から戦中にかけてフィリピンで生まれた二世である。戦前、ミンダナオ島ダバオを始めフィリピン全土に数万人規模で邦人社会が存在していた。太平洋戦争が始まるとフィリピンは日米の激戦地となり、多くの邦人が戦争協力を強いられ、二世の運命は大きくゆがんだ。日本人の父は戦死し、あるいは戦後日本へ強制送還されたので、多くのフィリピン残留二世はフィリピン人の母と共に、あるいは孤児となって取り残され、反日感情の強いフィリピンで日本人であることを隠して厳しい戦後を生きてきた。日本人の父を持つ残留者は、当時の日比の国籍法に照らして日本人であるが、戸籍がないために事実上の無国籍状態に放置されていた。今、この残留孤児が日本国籍の回復を求めて声を上げている。いまだに無国籍状態に放置されている残留日本人がフィリピンに今も千六十九人いることが外務省の調査で分かっている。この人々の平均年齢は八十歳を超えており、残された時間は僅かである。世界人権宣言第十五条は、全ての者は国籍を取得する権利を有するとうたっている。無国籍者の地位に関する条約をアジアでいち早く批准したフィリピンは、現在、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し、フィリピン残留日本人に対して無国籍者認定を行い、無国籍状態による様々な弊害の軽減に積極的に取り組んでいる。今度は日本政府が行動する番である。日中両政府間の協議に基づいて肉親捜し等の支援を行ってきた中国残留孤児と同様、戦争によって破壊された邦人社会の末裔(まつえい)、フィリピン残留日本人が国籍を回復するための政府の早急な取組を求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、厚生労働省は、厚生労働省設置法、同組織令、同組織規則に基づき、中国残留邦人と同様にフィリピン残留日本人についても、その状況調査並びに身上資料(フィリピン残留日本人名鑑)の作成・保管を行うこと。
二、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」(以下「中国残留邦人等支援法」という。)に係る通知等を改正し、フィリピン残留日本人を同法の援護対象とすること。
三、中国残留邦人等支援法第十二条を改正し、「中国残留邦人等」に対する「就籍その他戸籍に関する手続を行う場合の便宜の供与」が、日本に永住帰国していないフィリピン残留日本人にも供与されるようにすること。

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