請願

 

第196回国会 請願の要旨

新件番号 1408 件名 障害福祉についての法制度の拡充に関する請願
要旨  第百九十三回通常国会で成立した地域包括ケアシステム強化法は、介護保険と障害福祉等の事業を相乗りできる共生型サービスの創設を盛り込み、二〇一八年四月に実施された。これは「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現と銘打った政策の一環であり、その考え方は介護や障害、そして、生活困窮の問題を他人事とせずに「我が事」として捉え、縦割り制度を超えて「丸ごと」のサービスにしようというものである。しかし、「我が事・丸ごと」政策の具体的内容は、介護や福祉の充実のために、住民による互助・共助の助け合いの優先を強調し、また、共生型サービスの名の下で、少ない人員で効率的なサービスを提供するという生産性の向上の考え方を障害福祉分野に持ち込み、人手不足を解消しようというものである。そもそも、介護・福祉分野の人手不足の問題は、生産性の向上や効率性の追求で解決することはできない。少子化による人口減少もあるが、その根本的原因は、介護・福祉分野の給与水準の低さと劣悪な労働条件にある。今こそ、介護や福祉の仕事の社会的な評価を高めるために、財政的な裏付けを手厚くすることが求められる。さらに、共生型サービスのもう一つの狙いは、障害福祉の基準を緩和し、介護保険分野で激増した営利企業を障害福祉に大量参入させることである。今各地で起きている障害児・者支援事業所における障害当事者不在の事業者本位の運営や人権侵害と言える無責任な事業所閉鎖などは、障害のある人の人権保障の立場からではなく、もうけることのみを主目的とした心ない営利企業の参入が要因にある。共生型サービスの実施は、この問題を更に拡大させかねない。障害者権利条約を批准した我が国の障害福祉に求められることは、無責任な規制緩和や生産性の向上ではない。障害のない他の者との平等を基礎に、障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意を遵守し、内閣府・障がい者制度改革推進会議の骨格提言を公的な責任に基づいて実現することである。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、障害のある人が家族に依存することなく、自らが希望する自立した生活が送れるよう、所得を保障し、生活を支援する制度を確立すること。
二、深刻な職員不足の解決に向けて、一般労働者の平均賃金より月十万円も少ない福祉職の給与を増額するよう、報酬体系を抜本的に見直すこと。
三、障害のある人が、六十五歳を超えても必要とする制度を原則無償で使えるよう、障害者総合支援法の介護保険優先原則を廃止すること。
四、地域活動支援センターについては、安定した運営ができるよう、国がその実情を把握し、国の責任で予算確保のための措置を講じること。
五、障害者権利条約でうたわれた「他の者との平等」の権利を保障できるよう、障害関連予算の配分率を先進国の平均値並みに引き上げること。

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