請願

 

第195回国会 請願の要旨

新件番号 515 件名 障害福祉についての法制度の拡充に関する請願
要旨  二〇一六年六月、障害者総合支援法の施行三年後の見直しが行われた。本来この見直しは、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が二〇一一年にまとめた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」の積み残し課題が検討されるはずであった。しかし、二〇一五年六月の財政制度等審議会の「財政健全化計画等に関する建議」などによって国の財政抑制が強調され、障害者総合支援法見直しは大きく制約されたと言っても過言ではない。特に、障害者総合支援法第七条「介護保険優先原則」は、改められなかった。それだけでなく、同法の見直し過程では、「障害福祉サービス事業所を介護保険事業所になりやすくする」など、障害福祉と介護保険の統合への地ならし的な方向性が示された。第七条を補完するための「障害福祉と介護保険の併用を認める」という国の通知が出されているが、六十五歳を迎えた障害のある人に機械的に介護保険への移行を求める自治体が後を絶たない。それらに対し、各地で不服申立てや裁判が起こり、介護保険サービスを拒否する障害のある人も生まれている。一方、介護保険は利用抑制や負担増などの見直しが続き、多くの障害のある人は大きな不安を抱えている。にもかかわらず厚生労働省は、利用者負担二割の対象者拡大や被保険者の年齢引下げ案、つまり介護保険への障害福祉の事実上の統合を提案している。また、障害のある人の所得保障の柱である障害基礎年金は、生活保護よりも低い水準のままである。二〇一六年五月に発表されたきょうされんの障害のある人の地域生活実態調査では、相対的貧困とされる年収百二十二万円の貧困線を下回る障害のある人が八一・六%にも及んでいた。介護保険の抑制と利用者負担の大幅な増大とともに障害福祉の統合が進められてしまうと、障害のある人は、憲法第二十五条にうたわれた健康で文化的な最低限度の生活どころか、生きることさえとても困難な事態になってしまう。
 ついては、日本政府が二〇一四年に批准した障害者権利条約に基づいて年齢に関係なく障害を理由とする差別をなくし、障害のある人が他の者との平等を基礎として地域で安心して暮らすことができるよう、次の事項について実現を図られたい。

一、障害があっても一人の市民として生活できるよう必要な支援は原則無償にするとともに、年金などの所得保障を拡充すること。
二、障害者総合支援法の介護保険優先原則を廃止するとともに、誰もが安心して利用できる介護保障制度を実現すること。
三、利用者支援を充実させるために、報酬の日払い方式と常勤換算方式を見直すとともに、本体報酬を増額すること。
四、地域活動支援センターについては、国がその実情を把握し、安定した運営ができるよう予算確保のための措置を講じること。
五、障害関連予算の配分率を少なくとも先進国の平均レベルまで引き上げること。

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