請願

 

第193回国会 請願の要旨

新件番号 937 件名 イスラエル入植地問題に関わる日・イスラエル投資協定の問題点に関する請願
要旨  今年二月一日に署名された「投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定」(以下「日・イスラエル投資協定」という。)において、パレスチナ被占領地の問題が全く考慮されていない。イスラエルがパレスチナ被占領地における入植地拡大によってパレスチナ人の資源を収奪し、彼らの生活及び経済活動を阻害し、中東和平の可能性を掘り崩し続けていることに対し、EUや国連では様々な具体的対策を進めている。EUは、二〇一三年、イスラエル入植地に関わる機関・事業に対する助成等の利益供与を禁じるガイドラインを公表し、さらに、二〇一五年、イスラエル入植地産製品の原産地表示をイスラエル産としてはならないとするガイドラインを公表した。昨年十二月には、国連安全保障理事会にて、入植地建設を国際法違反とし、入植活動の即時・完全中止を求める決議(S/RES/2334)がアメリカの拒否権を受けることなく採択された。日本政府も賛成票を投じたこの決議は、イスラエル領と一九六七年以降の占領地とを区別して扱うことを要請している。ところが、今回の日・イスラエル投資協定では、協定の対象となるイスラエルの領域に入植地が含まれるのかどうかが明確にされていない。そもそも、日本政府は、オスロ合意以降、二国家解決を前提に十七・七億ドルにも上る対パレスチナ援助を行うなど、中東和平プロセスに積極的に関わりながら、パレスチナ国家独立の可能性を根底から切り崩すものである入植地建設を止めるための具体的対策を何ら取ってこなかった。形ばかりの入植政策批判の談話を発表し続ける一方で、入植地製品がイスラエル産として流通している状況を放置し、入植地ビジネスを規制する措置は一切採らず、国連人権理事会決議が求める自国企業への入植地ビジネスに関するリスク周知も行っていない。人権・国際法の観点、また外交の一貫性という観点から、日・イスラエル投資協定を国会承認する前に違法な入植活動に関与する企業の利益を日・イスラエル投資協定が促進することのないよう必要な措置を速やかに行うことが必要である。また、仮にパレスチナ問題が今後一国家解決の方向に向かうとしても、イスラエルのアパルトヘイト政策の中核にある入植地の存在は、パレスチナ難民の帰還禁止措置と並び、パレスチナ/イスラエルの地における公正かつ持続的な平和を築くという目的における最大の障害となることには違いはない。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、次の三点の措置が採られるまで、日・イスラエル投資協定の国会承認を行わないこと。
 1 日・イスラエル投資協定第一条の(g)項における「領域」の定義では、「イスラエル国については、イスラエル国の領域(領海を含む。)並びに大陸棚及び排他的経済水域であって、イスラエル国が国際法及びイスラエル国の法令に従って主権、主権的権利又は管轄権を行使するものをいう」とある。日・イスラエル投資協定を承認する前に、ここで言われているイスラエルの「領域」に、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区及びガザ地区、シリア領ゴラン高原は含まれないということを明確にすること。
 2 二〇一三年一月に国連人権理事会の調査団が公表した報告書(A/HRC/22/63)では「入植地から得られる企業利益の終結」が求められ、対象となる入植地ビジネスの内容が具体的に列挙され、現在同理事会によって入植地関連企業のデータベース作成が進められている。日・イスラエル投資協定を承認する前に、上述したEUの事例を参考にして、こうした入植地ビジネスに日本政府や日本企業が関与することのないよう対策を取ること。
 3 二〇一四年三月、国連人権理事会は、各国政府に対し、入植地ビジネスに伴う法的・倫理的リスクについて自国企業に周知することを要請する決議(A/HRC/RES/25/28)を採択し、既にEUでは十七か国以上がそうしたリスクについての警告を公にしている。現状のままでの日・イスラエル投資協定の発効は、日本企業が入植地ビジネスに関与するリスクを高めるものである。日・イスラエル投資協定を承認する前に、国連人権理事会決議に従い、経済産業省のウェブサイト等を通じてリスク周知を徹底すること。

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