請願

 

第193回国会 請願の要旨

新件番号 673 件名 ライドシェア(白タク)の合法化に反対し、交通の安全・安心を守ることに関する請願
要旨  ハイヤー・タクシー産業は、規制緩和政策により、著しい供給過剰と熾烈(しれつ)な低運賃競争に陥り、公共交通機関の社会的使命というべき輸送の安全すら確保が困難な危機的状況となり、安全輸送にとって重要な運転者の賃金・労働条件も極限まで悪化した。そのため、二〇〇九年にタクシー適正化・活性化特別措置法が成立し、二〇一四年一月から同改正法が施行され、地域限定・期間限定で供給過剰の是正と運賃の適正化、利用者利便の向上と活性化に向けた取組が進められている。こうした取組の最中にもかかわらず、政府では成長戦略の一つとしてシェアリング・エコノミーの推進に向けてライドシェアと称する違法な白タク行為を合法化する動きが加速している。ライドシェアは、利用者と運転者との間で直接運送契約を結び、仲介事業者は運送責任を負わない。また、仲介事業者と運転者には雇用関係がないとされ、仲介事業者は運転者の労働条件に責任を負わない。ライドシェアの問題点は、このように道路運送法や労働法の適用を受けず、運送責任も雇用責任も負わない仲介事業者の下、運転者や車両に関する安全管理の保障もない旅客運送が行われる点にあり、輸送の安全が確保されないのは明白である。また、ライドシェアは高齢化が進む過疎地での対策として導入に向けた動きがあるが、交通政策基本法及び改正活性化再生法が制定され、地域の公共交通事業者間の連携の下で地域公共交通網形成計画が策定され、その実現に向けた取組が開始しているにもかかわらず、その導入を検討することは交通政策基本法の精神をないがしろにするものと言わなければならない。公共交通に求められる安定供給と持続可能な体制は、利用者の利便性より請負ドライバーの都合が優先されるライドシェアでは確保できるものではない。安全破壊・雇用破壊を引き起こすライドシェア・白タク合法化に強く反対する。
 ついては、安全・安心の公共交通を守るため、次の事項について実現を図られたい。

一、政府は、成長戦略の一つとして「シェアリング・エコノミー」の推進を掲げ、「ライドシェア」を合法化する動きが加速しているが、「ライドシェア」は運行管理や車両管理の体制がなく、安全確保・利用者保護の観点から大きな問題がある。また、公共交通のような利用者利便に即した安定供給体制も期待できない。さらに、運転者は請負業者とされ労働法の適用を受けず、無権利労働者が拡大することが懸念されるため、安全破壊・雇用破壊をもたらす「ライドシェア」を絶対に合法化しないこと。
二、「交通政策基本法」が制定され、自治体主導で地域の交通関係事業者の連携の下、地域交通計画の策定が始まり、その実現に向けた取組が始まっている。過疎地での「ライドシェア」導入に向けた動きはこうした政策と矛盾し、「交通政策基本法」をないがしろにするものと言わざるを得ない。国は「交通政策基本法」の精神で自治体と協力し、これまで以上に公共交通の維持・活性化に向けた取組を支援すること。
三、「ライドシェア」の導入の是非をめぐる公的な論議の場は、中立的に設定されているとは言い難く、規制改革推進会議(内閣府)、未来投資会議(首相官邸)等の会議体で「ライドシェア解禁」が主張されているが、その問題性を指摘する委員が含まれていないのは問題である。公共交通事業者の代表、労働者の代表、交通政策に詳しい学者らの意見を取り入れた上で、諸問題を十分に検証することもなく、性急に導入のための議論を進めないこと。

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