請願

 

第192回国会 請願の要旨

新件番号 414 件名 市ヶ谷記念館の展示改善に関する請願
要旨  市ヶ谷記念館は、防衛省庁舎B棟西側にある施設である。本記念館を構成している旧一号館大講堂は、極東国際軍事裁判(以下「東京裁判」という。)法廷の遺構であり、平成十年、防衛省(当時は防衛庁)が港区桧町から新宿区市谷本村町の現住地に移転する際、市ヶ谷台旧一号館保存運動が起こり移設復原したものである。現在、防衛省は本記念館を中心に見学ツアーを実施しているが、現行の展示は東京裁判の歴史的重要性を伝える内容とは言えない。市ヶ谷台旧一号館保存運動の目的及びその運動の結果、参議院本会議で採択された歴史が刻まれた建造物としての一号館の保存に関する請願(平成六年)の趣旨が東京裁判の歴史的重要性にあったことは明白であり、これを踏まえると本記念館の現状は誠に遺憾な事態である。平成二十二年十一月、ドイツ連邦共和国は、「ニュルンベルク国際軍事裁判」法廷上階にニュルンベルク裁判記念館を建設した。同館では、実際に使用された被告席や当時の映像資料のみならず、東京裁判の展示もある。その開館式典で独外相は、過去を知らずして過去から未来のために学ぶことはできないと述べ、世界史上で重要な役割を果たした裁判をその現場で後世に伝えていく意義を強調したと伝えられている。このようなドイツの姿勢を鑑みるとき、なお一層、本記念館の現状を座視することができない。本記念館を構成している旧一号館大講堂は、戦前、陸軍士官学校、大本営陸軍部等に使用された第一級の戦争遺跡でもある。防衛庁の市ヶ谷移転という偶然の結果、しかも、本来は消滅する運命であったにもかかわらず、奇跡的に生き残ることができたのである。さきの大戦の裁きを受けた場所が防衛省構内に現存するという事実は世界でも類例がなく、歴史的、文化的、政治的に見ても貴重な施設である。本年は東京裁判開廷七十周年に当たる。市ヶ谷記念館の展示内容をその歴史的重要性にふさわしいものに変更し、有効活用を図ることが目下の急務である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、東京裁判の裁判官、検察官、弁護人、被告人の肖像写真とそのプロフィールを館内に展示すること。
二、極東国際軍事裁判所憲章などを含め、裁判の経過を図示し、その中で検察官の主張、弁護人の主張、被告人の主張、裁判官の判決を館内に展示すること。
三、東京裁判に関する内外の公刊資料を収集し、館内に展示すること。
四、東京裁判に関する映像資料(記録映像)を館内で上映すること。
五、「市ヶ谷記念館」設立の由来に、歴史が刻まれた建造物としての一号館の保存に関する請願採択(平成六年一月)がなされたことを明記すること。
六、大講堂内に当時の法廷を復原すること。

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