新件番号 | 3431 | 件名 | 国際医療福祉大学医学部の設置認可の差止めに関する請願 |
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要旨 | 平成二十六年五月一日付けで東京圏の一部として国家戦略特区に指定された成田市は、国際医療福祉大学が平成二十九年四月に開設予定の医学部に対して、民間企業から二十二億七千六百万円で購入した用地の無償提供に加え、校舎設置費として四十五億円の補助金交付を予定している。しかし、この成田市における国際医療福祉大学の医学部新設に反対する。 ついては、次の事項について実現を図られたい。 一、文部科学省は国際医療福祉大学医学部の設置を認可しないこと。 理由 一、国が定めた方針に反する医学部設置の目的について内閣の方針と成田市の方針が相反すること。 内閣府、文部科学省及び厚生労働省が平成二十七年七月三十一日付けで定めた「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」によれば、目的として「世界最高水準の「国際医療拠点」をつくる」という国の医学部新設の方針を定めるとされており、留意点として「国家戦略特区の趣旨を踏まえ、一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる、上記の目的に沿った際立った特徴を有する医学部とすること」が挙げられている。これに反して、成田市の説明(成田市国家戦略特区推進課作成の「国家戦略特区における医学部新設について」)によれば、千葉県内の医学部は千葉大学一校のみであり、人口十万人当たりの医師数は全国最下位レベルにあるなど医師不足は将来的にも厳しい状況が続くと見込まれることに鑑み、こうした状況を改善し、地域医療の崩壊を未然に食い止めるために国家戦略特区を活用した医学部新設を提案したとしており、医学部新設は一般医の養成及び確保を目的としているかの説明であり、明確に内閣の方針に反している。なお、平成二十五年九月に成田市が国際医療福祉大学と共同で国家戦略特区ワーキンググループに対して提出した「国際医療学園都市構想」によれば、医学部の入学定員百四十名のうち二十名は海外からの留学生を含め国際舞台での医療の担い手となる人材として教育するが、百二十名は国内の医師不足の解消を図るため地域医療の担い手として教育すると記されている。このことも明らかに特区の方針に反している。 二、一地方自治体による国際医療拠点整備のための多額の財政負担を課する内閣の方針に疑義があること。 この方針に沿って国際医療拠点を整備するために医学部を新設するとしても、一地方自治体である成田市が医学部用地二十二億七千六百万円の無償貸与、建設費百六十億円のうち八十億円の補助、附属病院用地の造成費用十億円、さらに、附属病院の建設費用に関しても出資を打診されているなど、ばくだいな財政負担を行うことは適切ではない。また、これに先立ち、隣接地に本年四月開学の国際医療福祉大学看護学部、保健医療学部の用地取得、校舎建設に関し五十億三千八百万円の補助を行っている。国際医療拠点の整備であれば、国の責任で行うべきである。発展途上国において我が国が国際貢献できる医療分野は豊富に存在している。 三、地域医療の実情を無視した医学部及び附属病院の設置による現場医療の崩壊の危険性が指摘されていること。 この疑問については、既に日本医師会、千葉県医師会からそれぞれ反対声明が出されている。現在人口僅か十三万人の成田市には、既に一般病院として成田赤十字病院(七百十九床)、成田病院(七百十六床)が存在し、近隣には成田富里徳州会病院(二百八十五床)、東邦大学医療センター佐倉病院(四百五十一床)、日本医大千葉北総病院(五百五十二床)などの急性期病院が林立している。ここに、更に、医療法上の病床規制を撤廃し、附属病院六百床が建設されれば、医療供給体制の過剰、医療従事者の異動などにより現場の医療が混乱し、ひいては市民の医療へのアクセスが悪化することすら予想される。 |