請願

 

第190回国会 請願の要旨

新件番号 1988 件名 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願
要旨  てんかんはあらゆる年齢で発病する脳の病気であり、全国に約百万人の患者がいる。早期診断・治療により、七〇%以上の人が発作のない生活を送ることができる。てんかん発作には、一瞬手足がピクンとしたり短時間ぼんやりするだけの小さなものから全身けいれんまで様々な症状がある。また、不安や鬱、行動障害などの合併障害、医療、生活、学校や仕事の問題など、発作以上にてんかんのある人に深刻な悩みをもたらすことがある。二〇一一年の交通事故報道以降、てんかんを一くくりにして危険視する風潮が高まり、全国でいじめや解雇など不利益事例が報告され、てんかんに対する正しい理解と多様な支援が求められている。
 ついては、てんかんのある人とその家族が安心して暮らせる社会の実現のため、また、二〇一三年に自動車運転に関する二つの法律が成立したときの附帯決議の実現を求め、次の措置を採られたい。

一、啓発に関しては、てんかんについて、国民の理解を深めるための広報を行うこと。
 1 福祉事業、医療福祉行政担当、交通機関や病院の職員、教職員、警察官、救急隊員や消防官など、日頃からてんかんのある人と接する機会の多い人に対して、てんかんの正しい知識と介助・観察法を習得する機会を設けること。
 2 てんかんのある人が所持するための「緊急カード」を、全国に周知すること。
 3 日本てんかん協会と日本てんかん学会が協議して定めた毎年十月の「てんかんを正しく理解する月間(てんかん月間)」を、国においても、てんかん啓発に向けて周知し取組に協力すること。
二、労働に関しては、働く場の機会拡充を図ること。
 1 てんかんがあることを理由とした職場や職種等の差別が生じないように、国や都道府県・市区の行政機関が、事業所への啓発・指導を行うこと。
 2 てんかん発作により自動車運転が困難な人のために、運転ができなくても働ける職種に配置するなど、行政機関が事業主に対して積極的に指導すること。
 3 継続雇用が困難な人に、ハローワークは優先的に仕事のあっせんを行うこと。
 4 障害者法定雇用率の完全適用(雇用の義務化)を、円滑に実施すること。
三、医療に関しては、
 1 てんかん医療ネットワークを充実すること。
  (一)てんかんは、日常診療と専門医療の連携が重要な疾患であるため、専門医や専門医療機関の充実とともに、非専門医に対するてんかん診療の教育、研修の機会を設けること。
  (二)地域におけるてんかん診療ネットワーク体制を構築し、てんかん医療の地域格差を改善すること。
  (三)合併障害や併発症に対応する診察時間が確保できるように、制度の充実を図ること。
  (四)各種制度利用申請時に求められる診断書作成費に、公費負担制度を導入すること。
 2 災害時に抗てんかん薬が不足しないようにすること。 
  (一)東日本大震災の経験から、各自治体において、災害時に最低限の抗てんかん薬が流通できるように、平時から薬の備蓄計画や自治体内における薬の補完システムを整備し、その中には必ず抗てんかん薬が含まれるよう、国としてモデル計画書などを作成・指示すること。
 3 難治てんかんの克服に向けた研究・医療制度を充実すること。
  (一)国の臨床研究(精神・神経疾患研究開発事業)で、難治てんかんの研究を拡充すること。
  (二)難治てんかんの人が安心して生活できる、新薬開発、医療・保険制度を推進すること。
四、福祉に関しては、てんかんのある人が地域で安心して生活ができる支援体制を整備すること。
 1 「障害者権利条約」の精神を重視し、「てんかん」ということで生活支援サービスの対象から排除されることがないようにすること。
 2 障害者総合支援法は、てんかんによる障害特性を反映するよう制度を見直し、全国どこでも必要なサービスが受けられるようにすること。
 3 生活の視点を重視しつつ、様々な相談に総合的に対応できるよう、ハローワーク等の関係機関との連携を強化するなど、相談窓口の充実を図ること。

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