請願

 

第189回国会 請願の要旨

新件番号 983 件名 全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進に関する請願
要旨  我が国のウイルス性肝炎患者・感染者は、ピーク時の三百五十万人から現在二百五十万人と推定(厚生労働省)されている。死亡者数は一九六〇年代の年間一万人から漸増し二〇〇〇年代は年間四・五万人になり、これまでに百数十万人が肝硬変と肝がんで亡くなっている。医療の進歩により二〇一〇年代になって減少に転じ、現在の年間死亡者数は三・五万人余りとなったが、いまだ毎日百人以上が命を失っている。平成二十一年に成立した肝炎対策基本法の前文では「B型肝炎及びC型肝炎に係るウイルスへの感染については、国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがある」とされている。そして、「その原因が解明されていなかったこと」については、集団予防接種と同様に、一般医療でも針と筒の消毒や取替えが不十分なことや長期の売血制度による輸血等での血液感染がウイルス性肝炎の蔓延(まんえん)を拡大させたとされている。肝炎対策基本法第十五条には「国及び地方公共団体は、肝炎患者が必要に応じ適切な肝炎医療を受けることができるよう、肝炎患者に係る経済的な負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとする」とあり、また、附則では「肝硬変及び肝がんの患者に対する支援の在り方については、これらの患者に対する医療に関する状況を勘案し、今後必要に応じ、検討が加えられるものとする」とされている。しかし、第百七十七回国会で衆・参両議院で採択された請願「肝硬変・肝がん患者等の療養支援の推進」はいまだ実施されていない。こうした経緯を踏まえて、平成二十六年の患者団体と厚生労働大臣との協議において、「重症化した患者には時間がない」という早期実施の要望に対して、同大臣は「来年というほど簡単なハードルではない。ただ五年十年では時間が掛かり過ぎるのも確かである」と回答した。肝硬変・肝がん患者の療養支援の強化、取り分け医療費助成の実現は、高齢化・重篤化が進む肝炎ウイルス感染者にとって最も重要で急がれる課題となっている。また、肝炎ウイルス検査を受けていないウイルス感染者を早期に発見し治療に結び付けることは、国民病であるウイルス性肝炎を克服するための根幹となる対策である。しかし、いまだウイルス検査の受検率は十分とは言えず、さらにウイルス検査で陽性であることが判明しても必ずしも有効な治療に結び付かない現状が指摘されており、一層のウイルス検査受検推進と陽性者へのフォローアップを進めることが求められている。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者に係る医療費の助成制度創設を早急に検討し進めること。
二、肝炎ウイルス未受検者への一層の受検推進及び検査陽性者を治療に結び付けるより効果的な取組を図ること。

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