請願

 

第189回国会 請願の要旨

新件番号 830 件名 労働者の労働条件確保等に関する請願
要旨  これまでに推進されてきた規制緩和・構造改革の下で大企業を中心にコスト削減が徹底して行われ、その結果として労働者の賃金・雇用と中小企業の経営環境は著しく悪化した。また、医療や介護・福祉・年金制度などの社会保障が相次いで改悪され、社会的弱者のセーフティーネットは崩壊の一途をたどっている。
 ついては、憲法第二十五条に基づいて国民の生命と健康・生活を守り、憲法第二十七条に基づき国民の勤労権を保障するとともに労働者の労働条件向上を図るため、次の措置を採られたい。

一、雇用の抜本改善と制度・予算などの拡充
 1 労働者派遣法を抜本的に改正すること。派遣労働は臨時的かつ専門性の高い業務に限定して、派遣先の正社員との均等待遇を義務付けること。また、日雇・登録型派遣は禁止すると同時に、違法派遣・偽装請負などの撲滅を図ること。
 2 国の基金による「緊急雇用創出推進事業」(緊急雇用創出事業・重点分野雇用創造事業・震災等緊急雇用対応事業など)を継続し、予算を増額すること。
 3 高齢者雇用安定法第五条、第四十条に基づき、高齢者の就労確保を行っている「高齢者事業団」などへの援助・育成措置を強めること。また、二〇一一年十二月二十六日に改正された地方自治法施行令に基づき「「高齢者事業団」などへの仕事の発注を随意契約で行うことが可能となった」ことを、各市町村などに文書で周知・徹底を図ること。
 4 雇用保険の失業給付を改善すること。季節労働者の特例一時金を「五十日分」に戻し、一般の失業給付との選択制にすること。通年雇用促進支援事業を改善・拡充するとともに、季節労働者冬期援護制度を復活すること。
 5 学童保育指導員が、安定的・継続的に働けるよう人件費を大幅に増やすこと。国の示す基準を下回ることのないようにすること。また、文部科学省所管の「放課後子供教室」と事業目的が違うことを明確にして一体化はしないこと。学童保育の質を確保するため指定管理者制度から除外すること。
 6 高年齢者雇用安定法を改正し、定年延長・継続雇用を理由に賃金・労働条件を引き下げてはならないことを法律(労働契約法・労働基準法)に明記すること。
二、賃金・労働条件と労働環境等の改善
 1 地域別最低賃金を早期に時給千円以上に引き上げ、全国一律最低賃金制度を確立すること。現に発生している最低賃金法違反については、業界や地域への指導強化を含めた集団指導等を徹底して、罰則規定を設けて厳格に取り締まること。
 2 公務・公共サービス業務での適正賃金を確保するためにILO第九十四号条約を批准するとともに、公契約法を早期制定すること。
 3 道路貨物運送業・道路旅客運送業の「過労死」等が他業種と比べて異常な高率となっている現実を直視し、交通運輸労働者の健康を維持し労災職業病の予防を図る抜本的な対策を講じること。
 4 自動車運転者の労働時間等「改善基準告示」を、「ILO第百五十三号条約及び同百六十一号勧告」、「過労死認定基準」などとの関連から抜本的に改正し、拘束時間の大幅短縮、休息期間の延長などを定めるとともに、ILO第百五十三号条約及び同百六十一号勧告を批准し、法制化してその実効確保を図ること。
 5 交通運輸労働者に係る労働関係法違反を厳しく取り締まる監督体制を強化すること。そのための人員を増員すること。
 6 交通運輸業・建設業に多い社会保険未加入事業所の保険加入を徹底すること。その際、労働者の賃下げにならないようにし、零細事業者や下請企業について、発注者・荷主・元請などの責任で事業主負担分などが確保できるようにすること。
 7 建設現場で個人請負の形態で就労させる場合「一人親方労災保険」に加入するよう元請企業への指導を徹底すること。また、四トンダンプ、生コン、平ボディなどの車持ち労働者が「一人親方労災保険」に加入できるよう対象範囲の追加措置を実施すること。
 8 石綿製品等の輸入に携わってきた港湾荷役労働者などについて実態調査を行うとともに、石綿健康管理手帳を交付すること。
 9 トンネル工事における労働時間の「一日八時間、週四十時間」を上限とすること。
三、安全・安心な医療・介護・社会保障制度の確立
 1 社会保障制度を解体する「社会保障プログラム法」及び、医療・介護の受給権を奪う「医療・介護総合推進法」は廃止すること。
 2 後期高齢者医療制度と障害者総合支援法を直ちに廃止し、高齢者・障害者が安心して生きがいを持って生活し、医療・支援を受けられる制度を確立すること。
 3 公的年金の減額給付をやめ、受給開始年齢以降に安心して生活ができる最低保障年金制度を早期に確立すること。
 4 「要支援者はずし」など介護保険法改悪をやめ、利用者や家族が 安心して利用できる内容に抜本的な改善を図ること。介護報酬の引下げをやめて介護職員等の賃金などの処遇を大幅に改善・充実すること。
 5 日々雇用労働者の雇用・医療保険受給資格要件である「印紙保険料納付日数」(労働日)を現行の「二か月間で二十六日」から「二か月間で二十日」にすること。
四、東日本大震災・原発事故の被災者・被災地への対策
 1 震災被災地において公的就労事業(失業対策事業)を早期に実施すること。
 2 東日本大震災の復旧・復興事業において、被災地の復旧・復興作業や放射能の除染作業に従事する労働者の「いのちと健康」を守るため、公的に就労を証明する手帳などを発行し、定期的な健康診断を行って、アスベスト粉じんや放射能曝露(ばくろ)などによる健康被害を最小限に抑えること。

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