請願

 

第186回国会 請願の要旨

新件番号 571 件名 現行の被災者生活支援等施策の推進に関する基本方針を改め、被災者の立場に立った原発事故子ども・被災者支援法施策の実施に関する請願
要旨  二〇一二年六月に「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「原発事故子ども・被災者支援法」という。)が全会一致で可決、成立した。この法律では、原発事故による被災者への幅広い支援策を「原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っている」国の責務において推進することを定めている。また、被災者自身が居住地を選択する権利を尊重し支援することとしている。さらに、胎児を含む子どもの健康への影響の未然防止や放射線の健康への影響に関する調査、健康診断の必要性、被ばくによる疾病への医療費減免などが盛り込まれ、なおかつ、被ばくと疾病との因果関係の立証責任は被災者が負わないとするなどの内容は、福島県民を始めとする原発事故により将来に不安を抱く被災者にとって、希望の灯となった。しかし、原発事故子ども・被災者支援法に基づく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」は、放射線量による基準を定めず、支援地域を福島県浜通り・中通りの計三十三市町村に限定、周辺地域を準支援対象地域とし、その他広範囲に見られるホットスポットなどを支援対象地域から外すなど、被災者の声を無視した内容であり、極めて問題がある。原発事故の影響を受けた被災地では、廃炉・汚染水対策への不安や怒りはもちろん、国が最終処分場も中間貯蔵施設も決めないため、仮置場が十分確保できず、福島県はもちろん広範囲の自治体の除染作業に大きな影響を与えており、放射能に不安を持ちながら生活を続けなければならず、ふるさとを追われた十五万人余の被災者は避難生活を強いられている。また、東日本大震災で今なお避難を強いられている人々は約三十万人に上る。地震・津波被害の復旧・復興が原発事故の影響(自治体の多忙、業者不足、資材不足、費用の高騰、等々)により、住まいや仕事の再建の見通しさえ立たないなど滞っている面が多々あり、地震・津波被害は天災であるとしても、復旧・復興の遅れは東京電力福島第一原発事故の犠牲と言わなければならない。原発事故被害と地震・津波被害が混在している中での復旧・復興については、被災者一人一人の置かれた事情を加味しながら複合災害の観点に立って推進していくことが必要である。国策として進めてきた原発推進政策がもたらした、原発事故の全ての被災者が抱える健康不安や生活不安は、早期に解消することが必要である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、現行の「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的方針」を被災者の立場に立った「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針に改め、支援対象地域の範囲、支援施策の内容、自治体との連携、予算措置など早急に取り組むこと。
二、「基本方針」の改定に当たっては、「影響のあるなし」を正しく把握するためにも支援法の対象地域を福島県、及び、除染対策以前に年間追加被曝(ひばく)線量一ミリシーベルトが想定された地域とし、対象地域に居住する者、対象地域から避難をしている者、及び、対象地域で働く者を対象者とすること。
三、原発事故により被った被害に対し、東電が誠実に対応するよう強く指導すること。原発事故の影響で遅れている地震・津波被災地の復旧・復興に対し、改善策を講ずること。全被災者に対する自立支援施策を講ずること。

一覧に戻る