請願

 

第183回国会 請願の要旨

新件番号 16 件名 一部報道や財政的な都合のみを前提とした生活保護の安易・拙速な改悪を絶対に許さないことに関する請願
要旨  お笑いタレントの母親が生活保護を利用していたことを一部メディアが問題視したことを契機に、一部の国会議員のみならず政府の間でも年金、最低賃金との不整合を口実にした生活保護費の引下げや、扶養義務・調査権限の強化、就労の指導強化・義務化、保護の有期制の導入、現物給付化、医療費一部自己負担等の生活保護法改正の動きが再熱、加速している。しかし、その内容は余りに感情的で、本来行うべき貧困の実態調査などは不十分なまま、制度そのものや制度利用者全般に問題があるかのごとき議論のすり替えがなされている。そこには、財政的な思惑が透けて見える一方、非正規労働者の増加、雇用保険や年金等他の社会保障制度が極めて脆弱(ぜいじゃく)であること、社会保障制度を補完する機能を担ってきた家族の変化に加え、格差と貧困の拡大、それに伴い孤立を余儀なくされている人が増大していること、それでも生活保護の利用率(捕捉率)は先進諸国に比べて低いという事実が置き去りにされている。生活保護の問題はこのような社会の在り方の一環であり、本来は、企業や家族に頼って現役世代の十分な社会保障を行ってこなかったことが問題なのであり、生活保護だけを取り上げても、生活保護の問題の本質は分からない。今後、生活保護について過度に自助や共助を強調し、その対象を狭く限定する方向を打ち出すのであれば、生活保護のみならず、雇用、医療・介護や年金制度、子育て支援制度など全ての世代、つまり、国民生活全体に影響するナショナルミニマムの切下げをもたらす。一部報道に乗じた社会保障の安易・拙速な改悪は絶対に許さない。ましてや財政論先行の改正議論などもってのほかである。求めるものは、義務や強制ではなく、権利としての自立支援であり、憲法第二十五条で保障された生存権を守り、生活を保障する機能を強める貧困を無くす政策である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、ナショナルミニマムの切下げをもたらし、最後のセーフティネットである生活保護制度を底抜けにする改正を絶対に許さないこと。
二、財政的な都合のみを前提とした生活保護法の改正議論をやめること。
三、現代日本の格差と貧困の拡大に向き合った真の社会保障制度の拡充のため当事者の参加も含めた国民的議論を行うこと。

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