請願

 

第181回国会 請願の要旨

新件番号 12 件名 じん肺とアスベスト被害根絶に関する請願
要旨  じん肺は、最古にして今なお最大の職業病である。いまだに二万人近くのじん肺有所見者がおり、毎年新たに五百人を超える最重症患者が認定されている。石炭じん肺やトンネルじん肺など国の加害責任は判決によって明確になっている。ILO(国際労働機関)・WHO(世界保健機関)は、二〇三〇年までに世界中のじん肺根絶と各国政府によるじん肺根絶計画の策定を提唱している。日本も、じん肺法の改正を含む抜本的な制度改革に取り組むことが求められている。アスベストは、じん肺の原因だけでなく、強い発がん性を有することが明らかとなっていたが、国が十分な対策を採らなかったため、多数の被害が発生している。労働安全衛生法施行令改正により二〇〇六年に石綿使用等が原則禁止となったが、今後もアスベストを使用した建物の改修、解体工事等による大量の被害発生が危惧される。また、昨年三月の東日本大震災によって広範囲にわたり建物等損壊の被害が発生し、瓦礫(がれき)や建物等の撤去、解体、運搬等の作業が長期間にわたって必要となっており、これらの作業によるアスベスト粉じんについて、作業員やボランティア、付近住民に対する曝露(ばくろ)防止対策を十分に採る必要が強くなっている。二〇〇六年三月に施行された「石綿による健康被害の救済に関する法律」は、二〇一〇年七月一日に救済対象となる指定疾病が拡大されたが、中皮腫と肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、びまん性胸膜肥厚の四つに限定され、救済給付金も労災法や公健法に比して低額に抑える等不十分な内容のままである。また、じん肺やアスベスト被害者を救済するための基金制度の創設、取り分け被害者が多発しているトンネルじん肺、建設アスベスト被害の基金の創設は急務である。また、トンネルや炭鉱、金属鉱山などじん肺を多く出してきた職場では、じん肺のほかに振動病が多発しており、その根絶と被害救済も課題となっている。厚生労働省は、振動障害の医学的検査、労災認定基準に関して一九七七年に発出した通達を改定しようとしているが、その内容は医学界等の合意もないまま、振動障害に苦しむ患者を切り捨てるものと言わざるを得ない。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、じん肺法施行後五十年を経過した今なお、トンネル建設工事、造船、各種製造業、建設業を始め多くの粉じん職場でじん肺が発生し続けていることを踏まえて、じん肺根絶に向けたじん肺法や関連法令の改正を行うこと。
二、トンネル建設労働者の就労などを一元的に管理し、じん肺被災者の早期救済を図る「トンネルじん肺基金」を創設すること。
三、建設アスベスト被害者補償基金を早急に創設すること。
四、振動障害の労災被災者に対する補償給付の充実を図ること。

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