請願

 

第177回国会 請願の要旨

新件番号 1007 件名 総合特別区域法(通訳案内士法の特例)に関する請願
要旨  国際観光の振興を目的として通訳案内業務を考える場合、最も大事なのは訪日外国人の満足度の高さである。通訳案内士は国の知的財産であり、優秀な通訳案内士を持つことは、他の観光先進国同様、歴史や文化を守る国として必須である。現在我が国には、通訳ガイドサービスの品質を保証するために二つの制度がある。一つは、約六〇年にわたって実施されてきた全国を稼働範囲とする国家試験に合格した「通訳案内士」、もう一つは、平成一八年度から導入された都道府県を稼働範囲とし地方自治体首長が実施する試験に合格した「地域限定通訳案内士」である。しかし、政府は、総合特別区域法における通訳案内士の特例をもって、新たに「総合特区通訳案内士」の導入を拙速に実現しようとしている。「総合特区通訳案内士」の資格要件は、希望者に対して、総合特区自治体が一定の研修を実施し、修了者全てに、試験を行うことなく当該区域内での通訳案内サービスを有償で認めるものであるが、訪日外国人が安心して観光案内を受けられるよう、総合特区で必要とされる知識や語学力の水準を客観的に示し、その基準に達したか否かの認定試験を義務付けるべきであり、認定試験がないのであれば、「通訳案内士」という名称を与えるべきでない。五年前に導入された都道府県主体の「地域限定通訳案内士」はほとんど有効活用されておらず、「総合特区通訳案内士」制度も同様の課題が生じることのないよう、また、きちんと日本を紹介できる経験豊かで優秀な通訳案内士が多く育つ制度をもって、真の観光立国の実現を目指すよう求める。 
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、能力認定試験なしで、「通訳案内士」の資格を与えないこと。 
   研修のみで認定試験を行わないことは、通訳ガイドに必須の語学力及び日本文化への理解共に、「通訳案内士」としてのレベルが保証されない。 
二、仕組みやレベルの異なる制度で、同じ「通訳案内士」を名乗らせないこと。 
   国家試験の合格を条件として、質の保証されている「通訳案内士」と、無試験のため、レベルの保証されない「総合特区通訳案内士」に、同じ「通訳案内士」の名称を名乗らせることは混乱を招く。 
三、「通訳案内士」の質を維持する方法で、真の観光立国の実現を目指すこと。 
   総合特別区域法案が法制化された場合、通訳案内サービスを購入した外国人は、語学力や知識のない案内士から日本の歴史、文化等を案内されることになり、外国人の期待を裏切るおそれがあるだけでなく、結果的に、日本のイメージが損なわれる。また、日本をきちんと説明できる「通訳案内士」や「地域限定通訳案内士」が育つ土壌が失われ、中長期的に、真の観光立国の実現の障害になる。

一覧に戻る