請願

 

第176回国会 請願の要旨

新件番号 256 件名 日本版US―Visit法の廃止に関する請願
要旨  政府が二○○七年に導入した、日本への入国審査において指紋・顔写真などの生体情報を強制的に採取するシステムは、外国人のみが対象とされている。採取された生体情報の流用目的として、犯罪捜査が挙げられているが、外国人のみをテロリストあるいは犯罪者予備軍として扱うものであり、このような差別的扱いは、日本社会に外国人嫌悪の風潮を強化するおそれが大きく、外国籍の人はもとより外国籍の家族を持つ日本人に、不利益や重大な困難をもたらしかねない。政府は、入国審査時に採取した生体情報を、長期にわたって保管し、様々な目的に流用することを予定しているが、生体情報流出によるプライバシー侵害等のおそれは極めて大きい。しかも、流出した場合に生じる損害は、生体情報が生涯不変であるがゆえに、甚大なものとなる。家族の中に国籍による分断をもたらす点も重大であり、入国審査で、家族が犯罪者予備軍、テロリスト予備軍として生体情報を採取されることは、子供たちに、家族のそして自らのルーツに対する否定的な感情を植え付けてしまう。また、子供自身も一六歳以上になれば生体情報を採取される側となり、入国審査のたびに否定的な感情を増幅させることになりかねない。このようなシステムは、非人道的であり、多様性の尊重と寛容の精神、人権尊重と人道的施策が求められている、国際社会の趨勢(すうせい)に背を向ける行為と言え、国際的な人的ネットワークを損ね、日本の国益も損なうものとなる。そもそも、政府はテロリストの入国阻止を目的として掲げているが、テロリストのリスト内容の恣意(しい)性について疑念があるほか、ブラックリストに挙げられていない人物がテロ目的で入国を試みる場合、阻止することは不可能である。先に導入したアメリカでも、実効性への疑問が呈されている上、システムの不具合による空港の機能停止事故など、様々な問題が生じている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、日本への入国審査において指紋・顔写真などの生体情報を強制的に採取するシステムの廃止を行うこと。
二、このシステムによって既に採取されたすべての生体情報の完全なる破棄を行うこと。

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