請願

 

第174回国会 請願の要旨

新件番号 172 件名 アスベスト被害の根絶に関する請願
要旨  じん肺は、最古にして今なお最大の職業病である。いまだに二万人近くのじん肺有所見者がおり、毎年一、○○○名前後が最重症患者として新たに認定されている。また、毎年一、○○○名近くが死亡していると言われている。数多くのじん肺裁判の結果、企業責任は明確になっており、国の責任も多くの判決によって明確になっている。二○○七年六月には、厚生労働大臣、国土交通大臣、農林水産大臣、防衛施設庁長官とトンネルじん肺根絶訴訟原告・弁護団の間でトンネルじん肺防止対策の抜本的転換を図る合意書が調印された。ILO(国際労働機関)・WHO(世界保健機関)は、二〇一五年には世界中からじん肺を根絶すべきである、そのために各国政府はじん肺根絶計画を策定すべきであると提唱している。日本も、我が国最大の職業病であるじん肺を遅くとも二〇一五年までに根絶するための抜本的な制度改革に取り組むことが求められている。また、アスベストは、じん肺の原因物質であるとともに、強い発がん性を有していることが明白になっている。労働安全衛生法施行令の改正により二〇〇六年九月から石綿の使用等が原則的に禁止されたが、いまだ多くの例外が残されており、今後アスベストを使用した建物の改修、解体工事等による大量の被害発生も危惧(きぐ)される。二〇〇六年三月に「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行されたが、救済の対象となる指定疾病を中皮腫(しゅ)と肺がんに限定するとともに、救済給付金も労災法や公健法に比して低額に抑える等極めて不十分な内容となっている。じん肺やアスベスト被害の根絶とともに、被害者を救済するためには、基金制度の創設が必要であり、取り分け被害者が多発しているトンネルじん肺、建設アスベスト被害に関しては急務である。また、トンネルや炭鉱、金属鉱山などじん肺を多く出してきた職場では、じん肺のほかに振動病が多発しており、その根絶と被害救済も課題となっている。厚生労働省は、振動障害の医学的検査、労災認定基準に関して一九七七年に発出した通達を改定しようとしているが、その内容は医学界等の合意もないまま、振動障害に苦しむ患者を切り捨てるものと言わざるを得ない。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、アスベスト被害の発生、拡大を防止するため、アスベスト使用建物の解体、改修、廃棄物処理の実態を調査した上、アスベスト粉じん暴露(ばくろ)防止の徹底を図るよう関係各省庁に改善を指導すること。
二、石綿救済法を改正し、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚を「指定疾病」に加え、また給付金額を労災補償と同等にするなど、「隙間(すきま)のない救済」を実現するとともに救済内容を充実させること。

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