請願

 

第170回国会 請願の要旨

新件番号 556 件名 身近な地域での安心して産める場所の確保に関する請願
要旨  過酷な勤務や訴訟の多さなどにより、産科医が廃業したり新規開業の減少で、産科医の不足、産む場所の減少が深刻な問題となっている。地域によっては、冬の凍結道路を妊婦が車で時間を掛けて通院しなくてはならず、大都市でも分娩(ぶんべん)予約ができない事態となっている。女性が身近な地域で安心して産める場所を増やすため、また産科医の過酷な勤務体制の負担軽減のため、質の高い産科医・助産師の養成数を増やし、助産師の指導の下、産前からの身体づくりを意識した環境づくりを行い、出産の八割を占める正常なお産を担う助産師の力を強化し、活用するよう求める。産科が閉鎖された総合病院では、多くの助産師が看護師として働いているが、産科設備は現存するので、助産師がお産の仕事をすることは十分に可能と言える。異常時の医療連携体制は整えた上で、このような施設を使って、助産師が正常なお産の健診・出産にその専門性を発揮できるよう求める。政府は、産科医不足対策として医師を大病院へ集約することを進め、地域にある診療所(開業医)や総合病院の産科が相次いで閉鎖されている。そのため、高次医療機関にローリスクのお産が集中するようになり、満床等の理由から、診療所や助産所等からの緊急搬送を受け入れられず、多くの妊婦が異常が起こった場合への不安を抱えるようになった。日本に先行して大病院集約化を行った諸外国では「ローリスクのお産は小さな施設ほど安全である」(オーストラリア)等の研究報告が出されている。緊急搬送やハイリスク妊婦がスムーズに高次医療機関に受け入れられ、ローリスク妊婦に病院、診療所、助産所等の身近な出産施設の選択肢が保障されるよう求める。自然出産や夫立会い、母乳育児など、満足度の高いケアは、地域の助産所が産む女性と共につくり上げ、多くの人に支持されてきた。また産後の訪問指導、育児相談など、助産所は親となる女性を支える役割を地域で担ってきた。ところが平成一八年に成立した改正医療法第一九条によって、助産所の開設要件は厳しくなり、産科医や産科病院が不足する中、助産所の嘱託医確保は困難を極め、開業はもとより存続すら危ぶまれている。助産所を失うことは女性にとっても社会にとっても大きな損失である。政府及び地方公共団体は、妊婦と新生児を中心に据えた医療連携システムの確立に向けて、医療法改正に伴う参議院厚生労働委員会附帯決議「安心して出産できる体制の整備を進めるため、地域における産科医療の拠点化・システム化を図るとともに、助産師の一層の活用を図ること。また、母と子の安全のため、助産所の連携医療機関が確実に確保されるよう努めること。」に基づき、助産所の嘱託医・連携医療機関(新生児対応)を責任を持って確保し、地域の中核病院や公的医療機関に助産所や診療所からの緊急搬送の受入れを義務とするよう求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、身近な地域に出産場所を増やすために、産科医・助産師の養成数を増やし、特に、正常な妊娠・出産・育児のケアを担える助産師の力を強化し、活用すること。
二、全国の出産可能な公的施設を調査し、不足している地域には、産科の閉鎖された現存施設を活用した院内助産所・バースセンターを開設する等の措置を検討すること。
三、ハイリスク妊婦や緊急搬送の高次医療施設への受入れをスムーズに行うために、ローリスク妊婦の出産場所の選択肢(病院、診療所、助産所、自宅出産等)が保障されるよう、必要な措置を検討すること。
四、政府及び地方公共団体は、助産所の嘱託医・連携医療機関を責任持って確保し、それら地域の中核病院や公的医療機関に助産所や診療所からの緊急搬送の受入れを義務とするよう検討すること。

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